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北海道美術ネット別館

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■中嶋幸治展「Dam of wind,for the return」 (9月30日まで)

2007年09月29日 23時27分36秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 青森県弘前市の西どなり、平賀町(現平川市)生まれの20代で、ことし札幌に移り住んだ中嶋さんの個展。近年はあまり見られない本格的なインスタレーションになっています。
 インスタレーションに本格的もなにもあるものか、という声がきこえてきそうですが、近ごろの若手の作品は、ドローイングや映像、工芸的な小品が多いだけに、ここまできっちりと仕上げてきた姿勢は評価できるのではないでしょうか。

 正面に設置されたいちばん目立つ作品は「9本の苗木と土」。
 題のとおり、梅の苗木9本が天井から横一直線につりさげられています。苗木の長さはほぼひとしいのですが、つられている高さは、左が低く、右に行くにしたがって高くなっています。なんだか、楽器を思わせる形状です。
 苗木の直下の床には、作者の地元の白岩という土地から採取してきた白い土が、円形に置かれています。こちらは、左端に9個、縦に整列し、右へ行くにしたがって、8個、7個…と、数がへっていきます。
 よく見ると、それぞれの苗木にはテグス糸が添えられ、ぶらぶらしないように固定されています。
 ひとことで言うと、非常に整ったインスタレーションだという印象を持ちました。
 左端の苗木と壁の間は数十センチしかあいていないのですが、作者はときどき会場にやってきて、そこに寝転がるパフォーマンスを行うそうです。
 筆者が会場を訪れたときにはおられませんでしたが。

 左側の壁には「光のためのハンモック」が設置されています。
 9個の四角い灰色のブロックが等間隔に、横にならび、それぞれの上に、雨水をためた透明なコップが載せてあります。
 それらの上部に、電球を加工して壁にとりつけてあります。
 雨水ですから、泥のようなものも混じっていて、そこはワイルドな印象もありますが、全体的にはやはり整然とした感じです。
 ギャラリースペースを主宰する中森さんによると、ブロックは、テナントビルの暗喩だということらしいのですが…。

 入り口の右側には小品「風の封印」が展示してあります。
 また、2階に当たる高い場所の壁には「風の封印」シリーズと、ドローイング連作「風の印象」が展示されています。
 「風の封印」は、書の紙片を梱包したような作品で、第一印象は、村上善男を連想させます。この会場ではただひとつの、「東北のにおい」のする作品だと思います。

 中嶋さんは1982年生まれ。
 2002年に即興演奏集団を結成し、弘前とその周辺などで演奏するほか、ライブペイントにも取り組んでいました。
 昨年、道内をまわって野外制作を行いました。その足跡は、大沼、長万部、洞爺湖、白老、支笏湖、二風谷(にぶだに)、旭川、遠軽、サロマ湖、野付半島と、全道におよんでいます。
 中森さんの話では、昼間働き、夜はCAI(現代芸術研究所)で学んでいるとのことです。
 それにしても、彼はどうして札幌に来たのでしょう。  
 弘前はたしかに札幌にくらべると大都会ではありませんが、歴史のある城下町だし、棟方志功の故郷であるし、先年は出身の画家、奈良美智の大規模な展覧会も成功させて全国的な話題を呼びました。外側から見ているとそんなに悪いマチには見えません。美術をやるなら東京ではないかと思うのですが、ぜひご本人に会って、そこらへんの事情を聞きたいと思うのでした。


07年9月25日(火)-30日(日)11:00-19:00
temporary space(北区北16西5)


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