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北海道美術ネット別館

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追記あり■大井戸百合子展「北と南 Life」 (2018年3月2~31日、札幌)

2018年03月28日 22時55分52秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 冒頭画像、左端は「冬の坂道」。
 1982年作の銅版画だ。

 今度の個展はほとんどが旧作のようで、タイトルの「北と南」にあるように、北国の冬の市場に題材を得た銅版画と、マレーシア滞在時の印象を自由闊達な筆で描いたドローイングが、だいたい半分ずつ。

 筆者は北国の冬のほうに心引かれる。
 これは、どちらかの作品系列のほうがすぐれているとか、そういう問題ではなく、見る側の資質によるのだろうと思う。

 「冬の坂道」は、角巻に身を包んだ女性2人が存在感たっぷりに、こちら側に歩いてくる情景を描いている。
 背景は、奥へと続く上り坂で、両端には木造とおぼしき家が並んでいる。

 作者に確かめたわけではないが、小樽ではないだろうか。

 自分にとって小樽の町のイメージは、古い木造家屋が残っていて、急な坂道があって、冬になるとどっさりと雪が積もっている…。そんな、郷愁にあふれた町だった。

 しかし、考えてみれば、「冬の坂道」の世界からもう36年が経過している。
 かつてあった古い建物も、都市を経るごとに新しくなったり、更地になったりしているだろう。木造住宅のかわりに鉄筋コンクリートの集合住宅やコイン式パーキングがはびこり、懐かしさはどんどん消えていってしまっているだろう。
 毎年雪が降り積もる季節になると
「ああ、小樽に行って、雪の町を幽鬼のごとくさ迷い歩き、写真を撮らなくては」
という考えが頭をよぎる。
 札幌からは電車でもバスでも1時間かからない。
 行かなくちゃ。

 けれど、時間がなくて、いつの間にか春になってしまう。

 ひょっとして、筆者は「冬の坂道」をもう見ることができないのだろうか。

 あるいは、現実を見て落胆するくらいなら、懐かしい町並みは記憶の隅にとどめておいたままのほうが、幸せかもしれない、とすら思うのだ。


 大井戸百合子さんは、絵本もいくつか出している。
 会場には「ふゆのいちばへおかいもの」などが並んでいて、自由に手にとって見ることができる。

 また、マレーシアで取材した「マングローブの家」「ナイトマーケット」などは北海道新聞生活面に連載されたエッセーの挿絵になっていたように記憶している。

(追記。大井戸さんの絵に登場する女性たちは、恰幅が良い人が多い。着飾って、ファッションにしか興味がないお姫さまとは、対極にある。いわば、暮らしの現場でたくましく生きているのだ。筆者は、そこに共感する)

 大井戸さんは札幌在住。春陽展と全道展の会員。


2018年3月2日(金)~31日(土)午前11時~午後7時(最終日~5時)
グランビスタギャラリー サッポロ(札幌市中央区北1西4 札幌グランドホテル本館1階)

大井戸百合子展 (2006、画像なし)
大井戸百合子「マレーシアの街角」原画展 (2004)




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