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「活字離れ」より「手書きの文字離れ」の方が深刻だ

2011年02月06日 00時32分33秒 | つれづれ日録
 せっかくアクセスが増えている(5日も1463IPで史上3位。gooブログ全体で188位)のだから、多くの人に読んでもらいたいことを書こう。

 テーマは、漢字の書体だ。

 最近、活字の字体が正しい-という思いこみを持っている人が多く、活字の書体と手書きの書体が必ずしも一致しないことがあることを、わかってもらえない場合があり、いささか困っている。
 パソコンの書体が、異体字があったりなかったりで、実にいいかげんであることが、混乱に拍車を掛けているような気がする。

 たとえば、先日の読売新聞でも紹介されていた例だが、活字の「令」と、手書きの「令」は、異なる。
 手書きでは、「今」という字の左はらいに「、」をつけたような字体になる。小学校でもそう教えているし、教科書体でもそうなっている。
 ところが、銀行の窓口で、自分の名前をそう書いたところ、行員から、活字と異なるので直せと言われた人がいたというのだ。

 活字と手書きが微妙に異なる例は、あまり意識していないだけで、実はけっこうあるのだ。
 糸偏は、活字では「糸」だが、手書きでは下部の「小」を、左から点三つで書いてもさしつかえない。
 「人」という字を、活字と同じく書く人はいないだろう。右はらいの始まる位置は、かなり下になる。
 「文」という字は、少し前の明朝体のデザインだと、左はらいの書き始めのあたりに「、」がついていることがあるが、その通りに「文」と書く人は、見たことがない。

 ところが、画数が違ったりすると、にわかに厳密になる人がいて、話が通じず、困ったことになる。
 
 しんにょうの点がよく話題になる。
 あれは、明朝体のデザインの元になっている康熙字典では、点が二つだが、楷書では一般的に一つなのだ。
 しかし、戦後の漢字改革で、常用漢字(当初は、当用漢字)の字体を手書きに近づける字体変更を行ったことから、常用漢字の活字のしんにょうは点一つで、常用漢字以外の活字のしんにょうは点二つという「ねじれ現象」が生じてしまった。

 これは、どちらかに統一すべき問題ではなく、学校できちんと
「活字と手書きでは違うことがあるんですよ」
と教えるべきなのだ。
 いや、学校では教えているのだろう。
 問題は、ワープロ、パソコンの普及以後、日常の場で手書きの文字に接する機会が減ったことで、学校で教わったことを忘れてしまい、活字が正しいと思いこんでいる人がやたらといることなのだ。

 ちなみに、漢字についての第一人者、阿辻哲次さんは、編集者などから「お名前の、しんにょうの点は一つですか、二つですか」と聞かれることがあると「どちらでもいいです」と答えているそうだ。

 そのうち、しんにょうの左側のカーブしている部分を、まっすぐに書いたり、「人」という字の右はらいを一番上から書いたりする人が現れるのかな。やれやれ。


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2 コメント

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ーと口 (エゾ三毛猫)
2011-02-06 20:48:52
日本語ならではの問題ですね。

パソコン画面に映し出される
ドットで構成された文字に
見慣れると、手書きの文章に
ひどく違和感を感じたりします。

キーボードから打ち出される文字は
記号に過ぎないかもしれませんね。
だって、数字の1を実際に書く時に
上のチョンを書かないですしね(多分)

ただ相手に用件を伝えるという事を
第一に考えると、パソコンの文字に
似せた「ーと□」でつなげたような
漢字の方がより正確に伝わるのかも
しれません。

そういえば、最近手書きの手紙を
書いてないし、たまに書く文字は
縦縦横横の線ばっかりでした、、。

エゾ三毛猫さん、こんにちは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2011-02-06 23:28:38
そうなんですよ~。
「手書きと活字の字体は違う」
という、あたりまえのことを、ついわすれっちゃうんですよね。

なるべく手で文字は書くようにはしていますが…。
メモは、ぜったいに手書きのほうが早いし(最近の若い人はそうでもないらしい)。

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