1989年生まれの若手陶芸家で、現在は盛岡と札幌を拠点に制作している井川ゆきなさん。
昨年、おなじギャラリーで3人展を開き、今回の個展となりました。
器はなく、大小のオブジェ14点が並んでいました。
いずれも曲線による、やさしくてやわらかな印象に覆われた作品です。
表面の、マンガンによる焦げ茶色が特徴です。
窓側の作品が「birth」。
表面を、細かい線刻が覆っています。
他は . . . 本文を読む
タイトルのとおり、異なる素材の4人展。
「真鍮しんちゅう」が闇月創房、木が清水宏晃、土、つまりやきものが中島知之、革が日々和創房―の4氏です。
清水さんは木工作家で、毎年2月に本郷新記念札幌彫刻美術館で開かれる「さっぽろ雪像彫刻祭」でも活躍していますが、今回とてもユニークなうつわを出品していました。
「マルタノボウル」という名で、シラカバやポプラといったあまり木工の素材にすることの多くな . . . 本文を読む
一見、伝統工芸にはあまり縁がなさそうに思われる北海道にも、和のわざをしっかりと受け継ぎ、新たな要素を加えて奮闘努力している作り手がいます。
かつて三越札幌店に巡回していた伝統工芸新作展を継承し、2011年に始まったこの展覧会。今回は2年ぶりの開催となったようです。
道内からは、次の通り、17人が出品しています。
陶芸=大野耕太郎(滝川市)、尾形香三夫(岩見沢市)、菊地勝太郎(胆振管内洞爺 . . . 本文を読む
(承前)
凍土会は「北海道の土を使う」ことを掲げ、斜里窯の中村二夫つぎおさんらの呼びかけで、10年前に始まったグループです。
道内には数百人の陶芸家がいますが、北海道の土は焼きものには不向きといわれ、多くは信楽などから土を取り寄せて作陶しているからです。
それでも、なんとか地元の土を使いたいと試行錯誤する陶芸家は少なくありません。江別や後志管内蘭越町など、あちこちに出かけて、土をさがして . . . 本文を読む
バティックは鮮やかな色が特徴の、インドネシアの伝統的なろうけつ染めです。
現地で技法を習った札幌の中田ゆう子さんが、昨年に続いて、ショールーム内で個展を開いています。
「あれっ、昨年とちょっと会場の雰囲気が違うなあ」
と感じていたら、今回は開催時季にあわせて秋冬を題材にした作品を中心に並べたとのこと。
「赤まんま」「雑木林へ深く」「虫の声」といった、茶色やオレンジを取り入れた作品はいかに . . . 本文を読む
札幌の陶芸家でほぼ毎年、スカイホールで個展を開いている香西こうざい信行さん。
自然の釉薬によるダイナミックな灰かぶりの作風で知られますが、制作の拠点である空知管内栗山町に「もみじ窯」が北海道胆振東部地震のため一部倒壊し、焼成前の作品も損害を受けたため、「生き残った作品」や、急きょ窯を修繕して焼いた作品を集めて個展にこぎ着けました。
窯は、震度5強を記録した栗山町市街よりも震源地に近いこともあ . . . 本文を読む
会期末になってあわてて江別市まで行ってきたのですが、すばらしい展覧会でした。
いや、展覧会自体としては、単に東京国立近代美術館工芸館から作品を運んできただけだから、特筆することはないわけですが、これだけの名品を見る機会は道内ではまずありえないのですから、眼福としか言いようがありません。
タイトルにあるように、明治期の超絶技巧から現代に至るまでの、陶磁、漆芸、竹工芸、染織、金工、木工など各分 . . . 本文を読む
米倉麻希さんからいただいた案内状には、次のようなことばが記されていた。
24種のバッグによる空想の旅…
私の記憶のかけらは心の中に積もり続け
出番を待っている
ステッチが余白を綴りだし
ピースは連なり動きだす!
今回は自分で布を織るのではなく、既製のグレーの布に刺繍ししゅうしたバッグや、布をつなぎ合わせた(ピースワーク)が並んでいる。
デザインはとてもシンプル。
冒頭画像で、左側 . . . 本文を読む
(承前)
北海道のプロ陶芸家集団、北海道陶芸会50周年記念展の続き。
前項で述べたように、6~7月の札幌芸術の森美術館での大規模な展覧会とは、別の作品が並んでいる。
手前は、会の顧問を務める小山耕一さん「彩色正燕子幾何文皿」。
何種類もあるピンク色は、さすが釉薬の研究で名高いこの陶芸家ならではのもの。
その左は前野右子「WAVE ―伝播―」。
横長の花器で、オレンジ、茶のうつろ . . . 本文を読む
道内のプロ陶芸家の集まり、北海道陶芸会は6月から7月にかけ、札幌芸術の森美術館で
「50周年記念展 陶・創造者たち―北の大地と共に」
を開いた。
インスタレーションや大作オブジェが並ぶとともに、交流のある米オレゴン州陶芸協会の作品も展示され、北海道の工芸の歴史に残る展覧会になった。
10月に入り、こんどは江別市セラミックアートセンターでおなじ題の展覧会を開催しているが、こちらは器が中心で、芸 . . . 本文を読む
「スーパー練上」が海外でも高い評価を浮けている岩見沢の陶芸家、尾形香三夫さん。
毎年さいとうギャラリーで個展を開いていますが、来年はニューヨークや山形、茨城など発表の予定が詰まっているため、この会場での展示は休むとのこと。なので、ぜひこの機会にじっくり見てほしいです。
「超絶技巧」などという言葉はあまり安直には使いたくないですが、ミリ単位の、色の異なる粘土を層にして何重にも重ね、精緻な波模様 . . . 本文を読む
工芸館の展覧会は、おなじ札幌芸術の森のなかでも、美術館と違って
・展示だけでなく販売もする
・道外の作家も積極的に紹介
・人選のアンテナが独自(ギャラリーや団体公募展、コンクールだけを見ていては、把握しようのないつくり手がけっこう登場する。要するに筆者にとっては未知の作家)
という特徴があるので、なるべく見逃さないようにしている。
今回は、作品や作家略歴だけでなく、制作手法の解説もあ . . . 本文を読む
札幌を拠点に、全国的に発表をしている丹波シゲユキさん。
ギャラリー創での展示は実に7年ぶりとなります。
筆者が見た個展は2年ぶりですが、そのときと比べても、白磁の器はさらに精緻さを増しています。
ハスの花を模した「華蓮」といった作品を見ていると、まるで極楽のようだと思います。
光沢のない作品が大半で、土をカッターナイフなどで削り取ってひとつひとつ成形しています。
中央は「白磁削手茶 . . . 本文を読む
漆芸は日本の伝統工芸ですが、実は近年、中国大陸からの輸入が増えて、国産の漆はだんだん少なくなっているそうです。
辻徹さんのすごいところは、国内でも良質の漆がとれる茨城県北部の太子町に移り住んで、漆かきから器の生産までを現地で行っていることです。自ら長い時間をかけて漆の精製もしています。
従来は茨城では、漆の木をかいて、原料を取り、他の土地に出荷していたので、地元でも漆の産地ということがあま . . . 本文を読む
札幌の染色家、長谷川雅志さんは、以前はギャラリーたぴおでのグループ展や個展で作品を発表するかたわら、渡島管内福島町の神社境内で毎夏行われていた名物イベント「かがり火コンサート」の会場装飾のため大作を手がけていた。
「かがり火―」が終了してガッカリしてしまい、「これじゃいかん」と気を取り直して制作したのが、会場の中央に据え付けられた大作「有耶無耶うやむや」。
二重丸のような文様が全面を覆い、 . . . 本文を読む