GRASSの日々折々

馬好きフォトグラファーが綴る日々の1ショット。

さらば、ラムタラ

2006年07月08日 | 馬徒然
種牡馬ラムタラが英国の牧場へ売却されるという。
1995年の欧州3大レースを無敗で制した「奇蹟の名馬」。英国三冠馬ニジンスキーを父に持つ栗毛の美しい馬。日高の生産者たちが、アラブのシェイク・モハメド殿下から44億円で購入した時は、NHKの「クローズアップ現代」でもとりあげられるほど話題になった。当時の日高は、バブル崩壊後、馬が売れなくなって苦しい状態にあり、生産者たちは大変な掛けに臨んだのだった。シンジケートの株を所有するある生産者は、番組の中で「こんなに薄い肌の美しい馬は見たことがない。この馬の子が走らないわけがない」と、日高にやってきたラムタラを見つめながらつぶやいていた。
ところが・・・、種付けシーズン真っ只中のスタリオンセンターを訪れた時のこと。種付け所のシャッターが下りているのを見て、同行していた牧場の人が言った。「ラムタラが仕事中だな」。「なぜわかるんですか?」との私の問いに、「ラムタラは繊細で、種付けが大変なんだ」との答え。
あれから10年、ラムタラの子供たちの成績は振るわず、当初1500万円だった種付け料も今年は20万円にまで落ち込み、種付け数も31頭だったという。競馬新聞の父馬欄に、ラムタラの名前はほとんど見られなくなった。そして、今回の英国への売却のニュース。その額、購入時の120分の1、約2750万円だそうだ。
これが、種牡馬世界の厳しい現実なのである。でも、日本を最後に廃馬となるたくさんの種牡馬たちがいる中で、英国へ旅立つラムタラはまだ14歳。新しい道が開けることを祈っている。
写真は、2001年1月、繋養先のスタッドで放牧中のラムタラ。
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