ヤングキングアワーズ 2018年6月号より
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●僕らはみんな河合荘 (宮原るり 先生)
コミックス10巻は6月30日発売! 3ヵ月連続刊行とのことで、楽しみです。
そんな今回、愛美さんが河合荘へやって来て・・・のつづき。
愛美さんと言い合う麻弓さんが、お酒の勢いでシロさんを呼びだしてしまい、
それに愛美さんが戸惑っている状況。
いつも麻弓さんが飲みの時に話す「シロ」さんについて、愛美さんは麻弓さんの
「大事な人」だと思っているようで、こんな状態で彼が来てしまったら、
2人の関係が終わってしまうと心配しているようですが・・・?
なんて感じに始まりましたけど、意外と愛美さんが麻弓さんのことを真面目に
心配しているのが、親友といった趣で好感触でしたね。
いつも通りの河合荘。
麻弓さんが寝落ちしてしまい、ひとりオタオタする愛美さんを横に、
律さんと宇佐くんは、全く麻弓さんを心配していないのが面白い。
ただ、いつもよりも早めに寝落ちしたらしく、度数の高い焼酎が原因だと
判明するや、これを飲ませておけば悩まされずにすむとばかりに、
通販検索を始めていたのは笑!
こんな風景が、いつも通りの河合荘っぽくてよかったですね。
愛美さんには慣れない場面かもしれませんけど(^^;
やって来たシロさん。
そして、シロさんが本当に来てしまったため、慌てる愛美さん。
今の麻弓さんの(寝落ちしてヒドイことになってる)姿を見られたら大変だと
気にしていたようですが・・・
麻弓さんを見たシロさんの反応が「またかー」だったことに、
愛美さんが「……えっ?」となっていたのが愉快でしたし、後ろでは
宇佐くんたちが呆れ顔、住子さんは笑顔でいるのも楽しかった。
シロさんは親戚の結婚式でこちらにいて、もともと寄るつもりだったというから、
その点は納得でしたものの、いつも麻弓さんから呼び出されては、浜松から新幹線で
やって来て、無駄足だったとドMの快感にひたるというから、相変わらずです。
また、話の流れで彩花さんの話も出てましたが、ベテランのマタギみたいになってる
というのは、彼女らしくて可笑しかった。
愛美さんから見た2人の関係。
呼び出されて遠方からやって来て、その割に呼び出した本人は寝落ち。
どう考えても理不尽な麻弓さんの対応ですが、それでもシロさんは気にしてない。
さすがに愛美さんも「よく愛想が尽きませんね」と尋ねますが・・・
ここでシロさんが、「こんな人、他にいない」と答えていたのには、思わず口笛。
これってつまり、麻弓さんがかけがえのない人であると言っているのも同様ですよね。
まあ、「こんな面白い人」と付け加えてはいましたけど(^^;
それでも愛美さんは、2人の関係を正確に把握していたのが、興味深かった。
「今まで一番タチの悪い男に捕まったんじゃ・・・」
この視点には、正直、唸らされてしまいましたね。
麻弓さんがシロさんを振り回しているようにみえる関係を、むしろ逆に
シロさんに麻弓さんが「泳がされている」と表現していたのが、面白い所。
これって、いわゆるSMの関係性と似ているのですよね・・・いや、真面目に。
「S」が「M」を従えているように思われますが、見方を変えると
「M」が「S」に“奉仕させている”ともいえる、互恵関係になっているわけです。
ゆえに、麻弓さんとシロさんは、まさにかけがえのない絆で結ばれている
と言えるのかもしれません。
時には吐き出すことも必要という話。
麻弓さんとシロさんの関係を眺めつつ、うらやましそうにする愛美さん。
けれど、ここで麻弓さんが「…うらやましいなんて思ってねーくせに」と言いながら、
愛美さんという人の内面について言及していたのは、面白かったですね。
愛美さんは、みっともない自分や、それを受け入れられることを許せない性格ゆえに、
シロさんにダメさを受け入れられている麻弓さんを、うらやむことはないだろうと。
そうしたことをわかっている麻弓さんは、やはり愛美さんの親友なのでしょう。
それでも愛美さんは、「麻弓みたいにヒッドイ部分をゴリ押しできれば楽よねぇ」
なんて述べつつ、自分は腹立ってわめきたくてもできないし、したくないと語っていますが・・・
そこに麻弓さんは「わめけよ」と、一言。
愛美さんが置かれた状況は、スペック高い彼女にとってもカバーし切れないものだから、
吐き出すことも必要だと麻弓さんが助言していたのは、意外な感じでしたけど良かった。
そこから、律さんや宇佐くん、シロさんまで、愛美さんが吐き出せるように
お膳立てするような言葉をかけていたのが、これぞ河合荘といった空気感あって、
見ていて、とても楽しかったですね~。
おかげで、これまで腹の底にためていた言葉を、一気に吐き出せた愛美さん。
言い切った後、憑き物が落ちたようにスッキリした顔をしていたのが、清々しい。
それもこれも麻弓さんが促したからと考えると、やはり2人は親友なのだと感じさせられます。
“仮宿”にて休息を得た愛美さん。
河合荘で吐き出せた影響なのか、愛美さんは会社でも、課長さんに反論しています。
その行動に、愛美さん自身は自己嫌悪を感じてしまっているようでしたけど、
これがきっかけで、状況が好転していたのはよかったですね。
言葉にしなければ伝わらないこともある・・・
自分の心中を明かしたことで、部下さんも心配してくれたり、課長さんも遠慮したりと、
愛美さんを慮って良い方向へ進んでいたのが、爽快でありました。
そのことを、河合荘で報告する愛美さん。
「思ってたより人って優しいのね」という言葉が素敵です。
住子さんも、「それは今までの愛美ちゃんが築いてきたものが返ってきたのよ」と
言っていましたが、きっとその通りなのでしょうね。
そして、河合荘が「ホント居心地よくて」「弱さもいいやって思えて」「許せそうで」
なんて考える愛美さんでしたけど、これこそが河合荘の本質であり、
“仮宿”たる所以なのだと感じさせられました。
だからこそ「これ以上は甘えていたくない」と、河合荘を出ることを決めていたのは、
愛美さんらしいと言えるのかな。
「私、やっぱり理想が高いみたい」「知ってた」という愛美さんと麻弓さんのやりとりが、
分かり合っている雰囲気があって、この2人もかけがえのない関係なのだと思えます。
などなど、愛美さん視点で見た麻弓さんとシロさん、そして河合荘という場所。
見事なまでに、河合荘の“仮宿”という本質を、彼女自身が体験することで
表現しきったエピソードだったのではないでしょうか。
孤独感を漂わせていた愛美さんが、今はひとりであっても孤独ではないと思わせる
ラストのモノローグと笑顔に、大きな安堵感を覚えますね・・・なんて感じつつ、
いよいよ次回が番外編のラストとのことで、寂しいけれども、楽しみです!