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◆ 『光芒のア・バオア・クー』 名も無き兵士たちによってつむがれる「歴史」の物語

2010年12月28日 | ◆マンガ 感想

『蒼き鋼のアルペジオ』作者であるArk performance先生(以下Ark先生)による作品です。

正確なタイトルは、『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』であり、

原作:富野由悠季先生原案:矢立肇先生となっております。

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Ark先生の作品には、これ以前にも『ギレン暗殺計画』(全4巻)がありまして、

こちらがかなり私好みだったこともあり、今回の新作2つを購読するに至りました。

もう1つの新作は、『ジョニー・ライデンの帰還』1巻です。

 

これら3作品には、「ギレン」~「ア・バオア・クー」~「ジョニー・ライデン」という連なりがあり、

この順番で読まれると、いっそう楽しめるのかと思われます。

 

また私は現在、安彦良和先生による『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を購読中ですが、

さほど「ガンダム」に詳しい人間ではありません。

そのあたり、無知をさらけ出すことになるかもしれませんが、ご容赦いただければ幸いです。

 

 

 

【あらすじ】

『機動戦士ガンダム』における地球連邦軍とジオン軍の最終決戦ア・バオア・クーの攻防を、

さまざまな場所、さまざまな人物の視点から見るオムニバス・ドキュメント形式の作品。

 

テレビ番組のインタビューを受けるかつての兵士やエンジニアたち。

その証言によって、「ア・バオア・クーの戦い」で何が起き、どのようなことが行われていたか、

多面的な角度から、その輪郭が浮き彫りになってゆきます。

 

要塞司令部で起きた大事件を目撃してしまった兵士。

激しい戦闘のさなか、“恐怖の対象”に遭遇してしまった学徒兵。

また、戦場にて希望を見る衛生兵や、“幻獣”たちの戦いに魅せられた連邦士官といった

無名の個人たちによってつむがれる「歴史」の記録であり物語です。

 

 

 

【感想】

まず、私がこの作品に感じた魅力は、ドキュメンタリー風に描かれるストーリーです。

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ジオン公国軍の学徒兵だった人物が、インタビューを受けているシーン。

ほぼ全編こうした形式で物語は進み、多彩な人物の回想によって語られる戦場での立場や、

そこで彼らが経験した出来事などが描かれています。

 

この描かれ方が、何と言うかある種の臨場感のようなものを感じさせてくれて、

それが「ガンダム」世界へと、次第次第に引き込まれてゆく気分にさせてくれるのが面白い!

そこで語られていることが、まるで「歴史」の1ページのような、そんな雰囲気。

「ガンダム」を知らずとも、戦場で生きる人々の姿がしっかり感じられる物語となっています。

 

 

・見事な演出と表現

インタビューにて、MS(モビルスーツ)立体音響システムについて語るコルバド・ストルツ氏。

Abaoaqu002  

このシーンで私が感じた面白さは、

1.彼が搭乗していたのが「ゲルググ」という当時最新鋭の機体であるということ。

2.音響システムの良さを語るのに、胸をたたいて表現しているところ。

3.「話が脇道にそれた」と、タバコの灰を落としながら語っているところです。

 

まず「ガンダム」を知っている人間ならば、「ゲルググ」がどのような機体であるかを

ほぼわかっており、ゆえに「そうそう、ゲルググって良い機体なんだよ~」とか得意気分で

読み進めたりできるのが面白いのです。(ちなみに私はゲルググ・スキー)

しかも「音響システムの音が良い」なんて、細かい所で最新鋭っぷりを見せつけてくれるのが

何ともニクイじゃありませんか~!

 

そして、その「音が良い」ことを胸をたたいて表現しているストルツ氏。

これが読者にも「どのように音の質が良いのか」を感じさせてくれる見事な表現。

思わず自分の胸をうって体感してみたり・・・しませんでしたか? 私はしました(私だけ??)

 

さらに、タバコの灰を落としながら「話が脇道にそれた」ことを語っているのも

ドキュメンタリーっぽいといいますか、いかにもインタビューだなと感じさせる演出であります。

何と言うか、「会話の流れ」をイメージさせてくれる印象。

これだけの要素つめこんだこのシーン、私はかなり好きですね~。

 

このように、しっかりした表現・演出で描かれたシーンがあちこちで見られるので、

飽きずに楽しく読み進めることができます。 少なくとも、私はそうでした。

これは、Ark先生の描写レベルが高いことの証とも言えるかもしれません。

 

ちなみにストルツ氏の話からは、ゲルググという最新鋭の機体を与えられることの意味や、

新兵はザクなどを与えられる方が評価が高い証拠であるといった、ちょっとだけ興味深い

ジオン軍事情も知ることができて面白いです。

 

 

・印象深いエピソード

また、とくに印象深いエピソードだったのは、もと衛生兵をしていた人物の話。

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「第67医療大隊・第4中隊」所属と語るオラース・エーメ氏。

このどこどこ所属という表明も、その世界を身近に感じさせてくれる要素になっています。

 

彼の仕事は衛生兵。

軍隊において医療関係の業務に従事するサポート要員であり、その役目は重要。

このエピソードでは、そうした立場での活躍が描かれています。

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「資料映像」として描かれている1コマ。

これもまたドキュメンタリーっぽい上に、現場で使用されている新型の医療パックが、

なんとも「ありそう」な光景に見えてよい感じです。

 

このエピソードは、負傷した兵士を助ける衛生兵の職務の内容や、

そうした中で「あきらめねばならない命」があることに対する葛藤、

そして遺品の整理・死亡の記録といった作業への想いなど、

戦場での命を感じさせてくれる物語となっており、そんなところに

私は感じ入るものがありました。

 

 

連邦軍兵士を救うジオン軍の衛生兵たち。

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これも感動的と言えば感動的ではあるのですが、エーメ氏は

「敵軍の負傷者に手を差し伸べる」のを友軍有利ゆえの心理的余裕と語るなど、

戦場でのリアリズムを感じさせる受け答え。

 

この後、エーメ氏の部隊は撤退を開始するのですが、ここでの進行がまさに「現場」を

感じさせる見事なもので、私はすっかり引き込まれてしまいましたよ。

 

さらにそこからエーメ氏は、ある「歴史的」出来事を目撃し、そのことによって危険な状況に

陥ることとなるのですが、このとき起こるある種の奇跡、戦場での希望を見出せるシーンは、

なかなかに感動的だったりもします。

回想するエーメ氏が淡々と、しかし思い出深げに語るところも、またよいのです。

 

また、本作品のラストでは歴史の闇をかいま見るような、思わず「むうっ!」と

うならされるようなシーンがありまして、なかなかに読みごたえがありました。

 

 

このように、ひとつの戦場における様々な人々、特別な地位にあるわけでも

エース級であるわけでもない名もなき個人たちが、戦い生きた軌跡を描いた本作品。

これは、まさにひとつの物語が「歴史」となる、そんな素晴らしい作品となっているように

私は感じました。

 

「ガンダム」を知らずとも、フィクションながら「戦場における個人」を描いた作品として

一読できる秀作でありますので、興味のある方はぜひ手に取られればと思います。

 

 

また、本来であれば『ジョニー・ライデンの帰還』1巻の感想も書きたかったのですが、

こちらの作品は、ややネタばれしながらでないと感想が書きにくいと感じたため、

今回は見送らせていただきました。

しかしながら、面白い作品であることに違いはなく、今後が楽しみな作品であります!

 

 

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