水屋杏里先生による4コマ漫画『パドラーズハイ』。
「まんがタイムジャンボ」で連載中の本作品は、ワタシ的に大当たりでした!
【あらすじ】
女子高生・琴瀬優宇(ゆーゆ)。
彼女が川下りスポーツである「ラフティング」に魅せられて結成した
ラフティング部のまったり日常と、懸命に練習にはげむ活動を描いた4コマ漫画です。
かつて家族でラフティングを楽しんだゆーゆは、その時のことが忘れられず、
ラフティング経験者である担任教師の桑城光夏(みー先生)に顧問をたのみ、
友人の葉山愛里(あいちゃん)と、文芸メガネ少女の望月汐(しおっち)を勧誘して、
ラフティングを思うぞんぶん楽しみます。
普段はぼんやりまったり感あふれる面々ですが、ラフティングの練習となると真剣そのもの。
和気あいあいとしながらも、ひたむきにスポーツに打ち込む様子は
見ていて楽しいだけでなく、軽い興奮を覚えるような高揚感ももたらしてくれます。
【感想】
まず「ラフティング」という、おそらくマイナーなスポーツを題材にしている点が面白い!
このように、ラフトと呼ばれるボートで川下りをおこなうのがラフティング。
優雅に川下り・・・というわけではなく、けっこうハードでスタミナを必要とするスポーツです。
(会話や川遊びを楽しむための、ツアーラフティングという形式もあるようです)
こうしたスポーツに、可愛らしい女子高生たちが挑む。
そして、ただ可愛らしいだけでなく、純心でひたむきな彼女たちの
一体感をともなった真剣にスポーツを楽しむ姿勢がとてもよく、
そんな様子に、私はさわやかな楽しさを感じずにはいられませんでした。
また、記事タイトルに「気持ちよすぎて“イッちゃう”少女たち?」と書きましたけど、
それがコレ↓です。
ゆーゆ、イッちゃってます。
これこそが、ランナーズハイならぬ
「パドラーズハイ」状態。
作中、彼女はよくこんな風になります。
これがホント気持ちよさそうで、ラフティングへの
興味を読者に抱かせる要素になっているかも?
■私が本作品に感じる魅力
本作品に感じる魅力、それは以下の3点が大きいです。
1.可愛らしくもひたむきな登場人物たち
2.まったり感覚と真剣なスポーツ感覚の同居、そのメリハリ
3.よどみなき川のごとし
まず(1)についてですが、部長ゆーゆをはじめ、みんな可愛らしい少女たち。
みー先生も、美人で頼れる大人の女性です。
一番左が、顧問みー先生。
ラフティング経験者の彼女は、やさしく丁寧にしっかりと指導してくれるうえに、
移動の際は車も出してくれるすばらしいお方。 あるモノに弱いことを除けば、完璧かも?
3人娘の真ん中が、部長ゆーゆ。
ぼんやりしている割には積極的に行動したり、練習のときにも前向きな姿勢で
みんなを引っ張ったりしています。 ただ、よくラフト(ボート)から吹っ飛ぶのがタマにキズ?
3人娘の右側が、あいちゃん。
ゆーゆの友人で、マイペース野生児。 亀と競争したり鹿を乗りこなしたり、なにげにスゴイ。
弟がいて張り合ったりもしているけど、のほほんマイペースが変わらないのは大物の風格。
3人娘の左側が、しおっち。
おとなしめの文芸メガネ少女なのに、ゆーゆ達に勧誘されてラフティング部へ。
なのにイヤな顔もせず、けなげにがんばる姿からは純心があふれています。
そんな彼女たちは、各々が可愛らしい女性であると同時に、とてもひたむき。
とくに3人の少女は「ぼんやり」「マイペース」「おとなしめ」と、
スポーツ向きでなさそうな性格をしていますが、練習に対する真摯な姿勢は本物です。
ゆーゆは「前向き」、あいは「動じず」、しおっちは「けなげ」、みー先生は「しっかり」。
それぞれの個性が上手いこと調和して、なおかつ互いを気づかうやさしさもあって、
本当に心地よい空間をつくり出している印象。
そんな彼女たちのキャラクターが作品全体をまったり安らぐ感覚で包みつつ、
同時にひたむきさも感じさせるので、それが高い好感度につながっているように感じます。
2.まったり感覚と真剣なスポーツ感覚の同居、そのメリハリ
川下り後に、まったりお昼ごはん。
可愛らしい絵柄なのもあってか、
なんともゆったりした雰囲気いっぱいです。
・・・・・・混ざりたい(ぉぃ
本作品の全体的な空気感は、こうしたまったり感が基本になっています。
しかし、この作品の面白いところは、こうしたまったり感だけで
部活・スポーツをしているわけではないという点です。
スポーツである以上、身体を動かしますし、なおかつハードに川下りをすることで
「パドラーズハイ」の領域に達するのですから、ゆったりまったりだけでは成り立たない。
そのため、真剣かつ積極的にスポーツに打ち込む姿勢が随所に見られたりします。
みー先生が皆にカツを入れているシーン。
ゲートを通るために一番大事なのは
「絶対通る」って思うこと!
「できるかな~」じゃ出来ないわよ!!
それに応えるように、3人が「通る!」と
念じながら懸命に漕いでいます。
この集中力、一生懸命さ、一体感、
すべてが前向き、そして真剣そのもの。
こうした少女たちの姿が、普段のまったりさとのギャップになって、
「真剣にスポーツしている」そして「それを楽しんでいる」と感じさせてくれて、
ちょっとした感動っぽい感覚をもたらしてくれるのです。
こんな「スポーツへ真剣に打ち込む姿」と、前述の「まったり感」とがあいまった
メリハリある描き方が、この作品の大きな魅力の1つであると、私は感じます。
私の大好きなシーン(P.104~P.105)
そこから2コマのみ引用。
ここでの一体感と、「前に進む」そして「越える」
という意思が本当にすばらしく、かつ感動的。
ラフティング部を創設してここに至るまでの
すべてがつまった、さわやかでしなやかな
言葉にできないくらい良いシーンです。
私は、胸にこみ上げるものを感じましたよ。
やや「できすぎ」な感はあるものの、
それでもこのはじける躍動感は素晴らしい!
3.よどみなき川のごとし。
もはや説明不要かと思われますが、今まで語ってきたように本作品の芯となっているのは、
少女たちの純心やスポーツのさわやかさなどであり、そこからくる読後感はまさに爽快感
あふれるもの。 これが本当に“気持ちイイ”わけです。
輝かんばかりの“陽”にあふれ、“陰”を感じさせない・・・そんな空気感。
こうした“陽”ばかりの描き方に、“陰”がないことをもって批判する向きもあるのだろうと
思われますが、それに対してはむしろそれこそが魅力となっているのだ、と返答したい。
よどみなき川のごとし。
これすなわち、スピーディーかつスムーズに川下りが進行するような心地よさを
感じさせてくれる描き方のことであり、本作品に対する私の印象なのであります。
ラフティング部の活動とゆるやかな日々。
彼女たちの進行方向には果たして何が待っているのか?
今後が楽しみでしかたないです!
なお、本記事ではラフティング部の活動に焦点をあてた感想となっていますが、
女子高生ライフな日常における友情感も、なかなか見所でありますよ。
そのあたりも注目です!
(追記)
まんがタイムジャンボ 2011年5月号にて最終回を迎えてしまいました(T_T)
一応、最終回感想はこちら。
私にとっては、終了がもったいないと感じてしまうほどの作品でした