小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

私の青春・アメリカンキルト

2014-01-15 21:33:44 | キルト

 ーベッドには美しいキルトがかかり、しかもきちんとかかっているー

 アメリカに行って何が一番印象的だったかと聞かれれば、どこの家に招かれても住まいが美しいこと、しかも機能的なことだった。ベッドルームは勿論、ドアを開けクローゼットの中まで見せてくれる。女性たちはハウスマネージメントの上手さをお披露するのだ。
 どこの家にもあるキルトはほとんどが手製、どれ一つ同じものがなかった。多くは幾何学模様でよく分析するとデザイン構成がなるほどと感心させられた。
そのころはあまりキルトの本も出版されていなかったし、展覧会も皆目なかった。

 どこの大学にもアメリカーナが学科としてなかった頃、やっと専門のアメリカンフォークアート美術館ができ、館長のロバート・ビショップがニューヨーク大学で特別講義を持つことになり、好き者同士が集まったため館長はじめ、生涯を通してのよき友にも巡り合った。

 千枚以上折り紙で折った折り線をたどって色彩を変えればどんな幾何学模様もデザインが可能であることを発見した。調査を始め、ニューイングランドをくまなく歩くことにもなった。

1983年、「アメリカンパッチワークキルト事典」を文化出版局から出版した。
どうしてもアメリカンキルトの展覧会を日本にもって行きたいとロバート・ビショップに相談すると、「あなたのアイデア早すぎる。その前にアメリカでやりましょう」ということになり 「第1回グレートアメリカンキルトフェスティバル」がニューヨークで開催された。スポンサーは3M.ウエストサイドのピアで始まった。

 
 アメリカで最初のキルトフェスティバルの優勝者とフォークアート美術館の館長   アメリカンパッチワークキルト事典の表紙になったキルトの前で     キルト事典を書いたころNYCの日々

          ロバート・ビショップとともに。1982年

   

キルト事典出版後、日本でキルト公募展を企画10年以上審査員をつとめた。本を書いていたとき石津謙介さんの紹介でニューヨークに訪ねてきた野原三輝と。
グラフイックデザイナーの彼は僕はビジネスをやるとキルトスクールを開き、私がアイデア、インフォメーションを送付しキルトの学校を作り、キルトジャパンというマガジンの出版を始めた。それが10冊ぐらいでヴォーグ社に譲ることになる。NHKの世界手芸紀行の一つ、「アメリカンキルト」のドキュメンタリー10日間の撮影とリサーチは 「ああ、若かったなー」 と思い出しても胸が躍る。このドキュメンタリーは20回以上のNHKから放映されたときく。


                   
           

福田繁雄さん、、池田満寿夫さん、マイケル・ジエムス、チャック、瀬戸忠信ヴォーグ社長等との審査は本当に楽しかったし、作者たちもハッスルしていた。

今年でNHKのキルトフェスティバルは13回目になる。スタート前にNHKからディレクターを頼まれたが、コマーシャリズムは私の意向とは違っていた。

しかしキルターたちの努力も30年もたち、みなさん自立し、影響を分かち合っている。技術的な巧さは世界一。最敬礼をして会場をみて回る。日本の匠の世界はすごい。何をやっても日本人の血が滲んでいると思う。幸せをはこぶ歯車のエンジン掛けになったことを、自己満足だけれども嬉しく思っている。調査当時、ハーバート大学で教鞭をとっていたライシャワーさんから、「キルトの研究のご成功を祈ります」との激励を受けたことも私のエネルギーの原点になった。
打ち込むことをアメリカ生活から学んだことを今、日本で感謝している。疲れを知らないで打ち込むのが青春時代なのだろう。

数日前アメリカ大使館に永住権破棄の申請を終えた。50年の月日がたっている。「本当に破棄しますか?」「はい」と答えこれからやることを考えていた。

バーハウスのような世界に影響を及ぼすキルトデザインが近い将来, 
日本から発信されることを心から祈っている。

 


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1 コメント

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まだまだですが~。 (上原 洋子)
2014-01-17 15:48:20
先生からフックを教えていただいて、1年ちょっと過ぎました。毎回すごいエネルギーをいただいてきます。
原点はここにあったんですね。
ずーっと日本にいらしたら、日本のキルトは また、違った発展をしていたかもしれないと思いました。
わたしはまだまだ作ることが楽しいだけのおばさんでしたが、これからもっと自己主張のできる作品作りをしていきたいと思います。
先生からがんばる勇気いただきました。
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