小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

猪熊さんの愛したなんでもない宝物(3)

2010-07-25 10:02:19 | ものつくり

                             鉄製鋳物ーキャスト アイロン

 猪熊さんの「画家のおもちゃ箱」猪熊弦一郎著:大倉舜二写真
(文化出版局1984年)をよく見ていると面白そうなものがページの
いたるところにある。

-作られたものは生きていて、人々の愛情を求めつつ毎日を生きて
いる。-猪熊弦一郎
 

 猪熊さんの眼にとまり、猪熊さんの手でとりあげられ、愛されて一緒
に生きることになった小物たち。耳を澄せばその会話が聞こえてくる
ようだ。私はページの隅々までよーく見て楽しんでいる。
                            
写真;「画家のおもちゃ箱」p. 48 オルゴールのバックになっている手作り鋳物のマッチ
ホールダーはパリで買ったもので、アメリカの専門家に聞いてみたがアメリカでは見た
ことがないそうだ。多分、たばこがファッションだった時パリのサロンで使われたのかも。

   猪熊さんのお好きなアーリーアメリカンのキャストアイロンのおもちゃたち。
           

写真:毎日楽しんでいる私の好きな19c.のキャストアイロン。 左は鉄製バンク。蓋を
あけると油絵でばらの花が書いてある。プラントを入れると楽しい。右は計り。赤色で
線模様があり、メモリのマークもいかにも手作り的。丸いおもりが楽しい。

 アーリーアメリカンのキャストアイロンは1642年イギリスの移民に
よってマサチュウセッツ州のサンガス アイロン ワーク(Sangus Iron
Works)で作られた。

 アメリカには木材が豊富で、生産された鉄はイギリスが輸入して、高
額な利益を得ていた。アメリカは独立を熱望し、独立戦争では市民が
自発的に鉄鍋まで溶かして弾丸を作った。

 鉄製品は家具(ベッドのフレーム、椅子、家具の部分)、)建築物、
フェンス、ドア ノブ、ドア、暖炉の薪置き(Andiron), 台所用品、おもちゃ、
汽車は勿論のこと、ストーブなどに使われている。キャストアイロンの
デザイナーは高級で雇われ、鉄製品は大人気になった。
 その多くは鍛冶屋の手仕事であったので個性があり、ニューヨーク
の街中で、ユニークな鉄製品が暮らしの中で溶け込み、150年以上
たった今もどこでも見られる美しい風景である。
 手にハートを込めて作ったものは時代を経ても心をとらえるのは、
お手当の言葉通り、鉄といえども人々の心を和ませてくれている。

窓の鉄格子はさまざまなデザインがある。タウンハウスの入口、鉄製プラント花壺、アパ
ートの入口の鉄門。珍しいものでなくニューヨークの19世紀建造物の一部になっている。

 
昔のタウンハウスは半地下がキッチン、又は仕事場、通りから階段を上がるとリビング、
応接間、ダイニングルームになっている。現在はほとんどがアパートに改造されている。
 
ニューヨーク  ダコタ前のキャストアイロン フェンス。70年代は盗まれて歯抜けになった
もあった。現在は復製されいる。右はセントラルパークの鉄製陸橋、50以上ある立体
交差の鉄製陸橋のデザインは同じものがない。手製だから出来たことなのか、デザイ
ナーの心意気なのか。両方に違いない。


ビルディングの外側に付けられた火災用階段は、19c.
の終わりごろ被服工場が火事
になり、何百人の女性たちが死亡した。その後階段は義務付けられている。現在は消防
車が10階まで伸びるので、子供にいる人は10階以上には住みたがらないそうだ。
ソーホーのアイロンビルディング地域には豪華なビルが軒並みに建つ。
家内工業用に建てられたが現在は改造されアパートやデザインルームになっている。

参考ブログ:小林恵のNY通信 「マンホール」2006/01/31
        小林恵のNY通信 「
キャスト アイロン ビルディング」
                 2006/02/21


 

 


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