山本一力「紅けむり」双葉文庫 2014年刊
伊万里焼の産地、佐賀鍋島藩をめぐる騒動。江戸の伊万里焼取扱商人、薪炭問屋、やくざ者、公儀隠密が絡み、不穏な情勢となる。
元はといえば、東インド会社の衰退で、伊万里焼の取扱が縮小したことから、大きな取引先を失った伊万里焼の窯元、販売先が新しい販路を求めて動き出すのが発端だが、佐賀藩の存亡を掛けるその行方に色々動き出す輩がいる。
この騒ぎに乗じて、b級品の販売に手を出したり、有ろう事か禁制の黒色火薬の輸送に手を伸ばす犯罪者集団も登場する。
薪炭屋の若主人は腹を決め、公儀隠密と手を組みこの一味と戦うことを決意する。このあたりの描写は手慣れたものである。やくざ者と公儀隠密ではもとより勝負にならない。無事一味は摘発されることになるが、判官びいきというかどこかに、公儀にも失敗せぬかと願う気持ちがでてくるのは、天の邪鬼な私の性格だろう。
しかし、特産品としての伊万里焼の比重の大きさは、莫大なもので、豊田市のトヨタに匹敵する影響力ではないか。
まあ小説としては無難な一冊というべき。入院中はこれに限らず本はたくさん読めた。時間があるから当たり前だが、本も気力がないと読み進められない。
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