山本一力「べんけい飛脚」新潮文庫 H26年刊
時は寛政、8代目吉宗の世である。加賀百万石前田家5代前田綱紀は70歳を超える高齢であるが、吉宗とは肝胆相照らすなかであった。大名の格式によって、参勤交代の規模が決められる世であったが、加賀百万石の行列となれば総勢4000人を超える。
これだけ大身の藩が無傷で徳川300年を生き抜いたのは奇跡であるが、その秘訣の一つが語られる。もちろんそれが目的ではないが、けっかてきにそうなっている。4000人の大移動は受け入れる宿場にとっても大事件であるが、当主綱紀は老中水野忠之と若干の確執があり、参勤交代の行列に100丁の鉄砲隊を帯同することを強行する。
これが、綱紀違反であることは明らかだが、吉宗の許可状を得て執行しようと取り巻きは奮闘する。行列出発と許可状発行の時間差を埋めるのが飛脚の足だ。もちろん一筋縄ではいかない。このへんの語り口は、やや取ってつけたようなきらいもあるが、後始末も含めまずまず面白い。
出だしはテンポも遅くじれったいが、慣れてくるとこの丁寧な描写が心地よい。まず面白く読めた。
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