遅いことは猫でもやる

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戦略眼、戦術眼

2014-12-25 12:34:39 | 


半藤一利著「連合艦隊司令長官 山本五十六」文春文庫

視力が衰えてきたせいもあるのだろう。最近本を読むスピード、理解するスピードがとみに衰えてきたような気がする。そんな中で読んだ名著である。

3,4年前に映画化された時の原本である。著者は山本びいきだというが、映画よりは冷静に史実を拾っているようにみえる。私は山本長官の生まれ故郷の長岡に行き、記念館を訪れ幼少の頃からの輝かしい足跡や、撃墜された搭乗機の主翼の残骸も見てきた。神格化さえしかねない地元記念会の熱気に触れたがこの著作は冷静である。

海軍経理学校で学んだ先輩が、一言彼から直接「しっかりやってくれ」と、声を掛けられたことを終生の誇りとして胸にいだき、我々にも語ってくれたくらい感激していた、カリスマである。

しかしこの本を読むと、彼は個人的な傑物だけでなく、暴走する陸軍の勢いに抗し、冷静な戦略眼をもって戦争反対に集中していたことがわかる。また軍人としては与えられた条件下でベストを尽くす姿勢を貫き、配下の小さなミス(南雲忠一中将の大チョンボにも冷静であったらしい)に動揺しなかったという。

硫黄島守備隊の栗原中将も戦略眼と戦術眼の優れた軍人であったと思うが、同じように腹の座った人物のようだ。冷静な判断力に基づく戦略と、隅々まで細やかに配慮を尽くす戦術とが共存する稀有の天才であったようだ。

著者の抑え気味の著述は、誰やらのヨイショ伝記とは違い、冷静で静かな感慨を生み出す。クールと言って良い著作だ。

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