高田郁「あきない正傅金と銀」(源流編)ハルキ文庫 2016年刊
私はこの作者の語り口が好きである。「みをつくし料理帖」シリーズで一遍にファンになったのだが、逆境に抗し、必死に職人の道を歩む。色々な工夫をこらしながら道を切り開いてゆく姿にひどく好感を覚えた。
本編も基本的にはその流れだが、テーマは商人道である。学者の家に生まれた主人公が、父と後継ぎの長男を相次いでなくし、男女差別の厳しい江戸時代の大阪天満の呉服屋勤めを始める。初めから女子は下働きだけで商人へはなれないと決められているのを、持ち前の才覚で次第にその道へと入り込む。
まだ物語は始まったばかりなので、続編がまたれるが、ほぼ設定は前作と同じように、逆境に育った健気な女子が小さな才覚を目一杯働かせて人生を切り開いてゆくというものである。女性著者らしいきめ細かな日常の動作描写の中に、女性心理や、周りの善意、悪意が浮かび上がってくる。
脚本のいいドラマはストーリーはそこそこでも感動を呼ぶ、とはよく言われたことであるが、この作者はこんな評価が似合いそうである。
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