朱野帰子「駅物語」講談社文庫 2013年刊
東京駅100周年記念の小説である。舞台は東京駅、登場人物は駅員とお客である。ある種の鉄道オタクが絡んでくる物語ではあるが、鉄道員の内側が覗けるのも面白い。
物語は優秀な成績の主人公が、鉄道オタクの弟の追悼と駅で不意に気を失い倒れた時に助けてくれた5人の乗客を探して恩返しをするというストーリーだが、新入生として配属された部署の同僚、先輩、上司などとの軋轢、やりとり、など複雑な人脈の絡みの中で、出会いを重ねてゆく。
5人の恩人との出会いが、少し不自然なのと、同僚の鉄オタが次第に溶け込んでゆくというのも安易すぎる設定だが、設定舞台が駅というのは良い着眼だと思う。様々な人間模様を見せるのにはもってこいの舞台だし、別れは何かと劇的になりやすい。女性筆者のせいか、ファッションやメイクの描写がきめ細かいのはご愛嬌である。
また、駅の勤務というのは様々な職務分担があり、それぞれが協力しあって安全運行、定時運行を果たしている苦労が垣間見えるのも面白い。
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