橘玲「タックスヘイブン」幻冬舎 2014年刊
面白い小説である。外務省勤務のロシア担当だった佐藤優氏が帯に「過去数年に読んだインテリジェンス小説で一番面白い」と評しているだけのことはある。
ミステリー小説、国際金融小説、の要素に加えスパイ小説の分野も入っている。著者はファンドマネージャー、工作員、国際金融銀行社員などの内情にも詳しくその動き方がいかにもという、リアリテイを示す。
この小説で知ったのだが、舞台のシンガポールは近年、スイスを抑えて銀行口座の秘密保持条項を持つようになったのだという。そこで、日本の政治家、ヤクザ、プライベートバンカー、スイス銀行、ファンドマネージャー、情報屋などがうごめく。我々の殆ど知らない世界だが、国際舞台ではいかにもありそうなである
小説であるから、そこに美女が登場し、高校の同級生、一匹狼、飲食チェーン店経営者などが入り乱れる。結末寸前まではかなり盛り上がり、緊迫感も持たせる。惜しむらくは最後の最後が少し情緒に流れすぎ無理に終えたように思う。
しかし十分に面白い小説であった。エンターテイメントとしては一級であろう。
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