宮部みゆき「幻色江戸ごよみ」新潮文庫
題名から分かるように、江戸時代を舞台にちょっとした怪奇現象を絡ませ、人間の恨み、怨念などを描いた作品である。
人間は昼から夜へと移行するとき(これを逢魔が時とよぶそうだが)様々な思いを刻むものであるが、ここでは人情ホラーとも言うべき分野で、色濃く人の思いを丹念に拾ってゆく。女性作家ならではの粘っこい描写が、それほどのアクを感じさせずに展開する。
12篇からなる、短編集であるが、それぞれ題材が違い面白く読め、飽きさせない。
いわゆる私小説の分野かもしれないが、人間の業の深さ、生き方についていろいろ示唆してくれる。小説らしい小説に出会った。
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