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沖縄の怨念

2019-08-13 11:04:02 | 


山城幸松「菊に挑んだ沖縄」ーー天皇の捨て子”沖縄”を生きる 彩流社2018年刊

私にしては珍しいジャンルの本である。実は友人から「私の知人が書いた本を読んで、是非ブログに書評を載せてほしい」という依頼があった。私ごときの書評に如何ほどの価値があるのはわからないが、そう言ってくれた心意気に感じて戴いた本に目を通した。

沖縄といえば、私が初めて訪問したとき、大田海軍中将の「沖縄県民斯ク戦ヘリ県民ニ対シ後世特別の御高配ヲ賜ランコトヲ」という電文を紹介されたとき、沖縄戦の苛烈さと、それを闘った沖縄県民の忠誠が偲ばれた記憶がある。

この本はそこではなくて、天皇が終戦間際、沖縄に最後の決戦を求め、講和条約締結の捨て石として指示を出したこと、また1947年にも沖縄に米軍の駐留を望む、というメッセージを出していることに怒りを覚えた新左翼系の学生運動家の活動系譜である。

これらの指示やメッセージが実際にあったかどうかは定かではないが、昭和天皇は沖縄訪問に特別な感情を持っていたらしく、気にしつつも生涯訪問の機会を得なかったのも確かである。沖縄出身の著者はこのコトを天皇自身の口から謝罪させることを最終目標に、次第に新左翼運動に傾斜してゆくが、ここらへんの活動記録はやはり体験だけあり面白い。

よくある新左翼経緯の文書と違うのは、いわゆる自己陶酔型ではなく、案外客観的な自己評価の視点が保たれていることである。そこから最後の坂下門外の変の目標は、マスコミに取り上げられ裁判闘争につながれば良く、決して暴力闘争に転じてはならない、という自制の効いたものであった。残念ながら裁判は意図した方向、にはならなかったがここらあたりは自他の力の差を客観的に見据えた活動方針である。

この本を読んでいて、ふと韓国のことを思い出した。あの怨念とプライドはすざましいものがある。沖縄はそれに加えて寛容さ、恕という柔らかな概念が生きている。韓国との違いである。