田中経一「ラストレシピ」ー麒麟の舌の記憶ー 幻冬舎文庫2014年刊
「料理の鉄人」のテレビ番組の演出を手掛けた人物の作品。「みおつくし料理帖」「鴨川食堂」などと違い、人情物ではなく、ミステリー仕立てである。
題名からも推察されるように、ラストエンペラーと同時代、同じような満州、日本が舞台である。当時の軍部から大日本食菜全席なるメニュー作りを下命された宮内省大膳寮の料理人が主人公の一人、そのレシピを探す現代の凄腕の料理人がもう一方の主人公。
料理というのは人間の感情に依存することが多いのだろうか。それほどメニューそのもの、料理そのものには深入りしないが、料理人には傾倒する。ストーリー展開も結構よくできている。何がラストかなという疑問は残るが、面白く読める一冊である。