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予言にならねば

2016-01-10 00:10:59 | 


東野圭吾「天空の蜂」講談社 1995年刊

恐るべき作家の想像力である。この作品がこの5年間に書かれたといっても何の違和感もない。ところがこれは20年前に出版された本なのである。それだけに原発に関しては根本的なところでは20年間進歩していないということだろうか。

二人の技術者が自動操縦装置を備えたヘリコプターを奪取し、原発上空にホバリングさせ、政府に全国の原発停止を迫るという設定である。NOならば、爆薬を積んだヘリを原発に落下させるという脅しに、政治家、警察、自衛隊、製造技術者が立ち向かう。

双方に肩入れすること無く、かなり客観性を持たせて物語は進む。文庫本で620ページになる長編ではあるが、ストーリーが単純なのにもかかわらず、読者を引っ張ってゆく。

ミステリーの部分はともかく、犯人の動機、警察、自衛隊の動きはかなり客観的で、さもありなんと思わせる。2015年5月で66版を重ねたというのもうなずける。難しい技術部分は難解なところもあるが、本書の構成にはほとんど影響しない。

原発推進派、反原発派双方に考えさせる要素を含んでいる。これが予言になって実行する輩が出てこないことを祈るばかりである。傑作といって良い作品である。