遅いことは猫でもやる

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等身大紹介本

2015-09-15 18:26:24 | 


マイケル・ブース「英国一家、日本を食べる」亜紀書房刊 寺西のぶ子訳 2013年

著者はあの料理不毛の地イギリス生まれのトラベルジャーナリストあるいはフードジャーナリスト。
基本的には最近の世界の日本食ブームに、乗っかっているのか、乗っけているのかよくわからないけど、その一家が3ヶ月近く日本に滞在して日本食を食べまくるという体験談。

大阪「カハラ」東京「壬生」と言った高級店から、新宿思い出横丁の焼きそば、大阪道頓堀のだるまの串かつ、札幌、博多のラーメン、京都「いづう」の鯖鮨まで、美味しいと評判のものを見境もなく食べ歩くという、外国人特有のパイオニア精神で突き進む。またそこで知り合う日本人がほとんど親切に案内しご馳走してくれる。ジャーナリストらしく、料理の歴史を調べ、台所に踏み込んで覗く。翻訳者の腕かも知れないが、かなり率直でウイットに富んだ語り口だ。

この人はかなり日本人についての理解が深そうである。壬生についてこんな記述がある。
「いわゆるレストランとという言葉には当てはまらないといってもいい。凝った内装を楽しみに行くわけでもなく、有名店だから行ってみるとか、有名人に会えるから行くというわけでもない。しいていえば、語らいのために、料理が自然について、味について、食感についてあるいは客自身について教えてくれる声を聴きにゆくのだ。壬生の食事は、啓示的体験であり、歴史の喚起であり、哲学であり、生と創造と死と自然の奥深い奥義であり、言葉のうえでも、自然という意味においても基本だ。僕はどう見ても2割程度しかわかっていない。・・・。

なかなかいいところを突いている。こんな哲学的な記述はほんの少しだけれど、ソースの二度漬け禁止や、いずうを案内してくれたゲイのホストを巻く話など、面白い記述が満載である。家族の観察もユニークである。外国人飲みた日本画客観的に描かれていて、興味深い。等身大の日本紹介本としておすすめである。