遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
更新は猫以下の頻度です。

お知らせ

Twitter で更新情報が観られます。やってる方はこちらからフォローどうぞ。
http://twitter.com/gaiki_jp

悪の迫力

2015-01-20 12:47:56 | 


黒川博行「後妻業」文藝春秋社

昨年京都で起きた、後添えの相手の老人ばかり6人が次々と変死した事件がマスコミで取り上げられたが、こういった事件はそれ以前にも木嶋佳苗という女性が練炭で相手を死亡させ遺産を手に入れようとしたものなど後を絶たない。

このようなことを計画的、組織的に進める「後妻業」という職業が存在するというのがこの本のテーマであるが、実に気味が悪い。老人を食い物にする手口はあくどいし、気分が悪くなる。

小説とは思えないほどの、迫真の描写で、唯一の救いは弁護士が登場するあたりからのやりとりである。そこに警察崩れの探偵社調査員が、私欲のための調査と強請を絡ませてくるところはいかにも小説ではあるが、メインの婚活パーティの主催者と主犯の中年女性の動きは、正にこんなのは本当にあるのだろうな、と思わせる。現代小説らしく勧善懲悪、正義の味方は出てこないけど、それぞれ私欲を踏み台に自分の望みを叶えてゆこうとする描写はさすが直木賞作家である。

後味も決して良くないが、人間の欲望を描いて迫力がある小説だ。