浜田宏一著「アメリカは日本経済の復活を知っている」講談社刊 2013年1月
旧知の方から、フェイスブック上で紹介された本。手元に持参してきた山本周五郎も読み尽くしたので、早速購入して読んでみた。
安倍政権がスタートする直前から唱えていた、金融政策=円高是正、国内産業活性化の政策提言は浜田教授の提言にあったのかと納得。
著者は小泉内閣のおり、経済ブレーンとして参画し、現在東大名誉教授、イェール大名誉教授でもある。
論旨は非常にシンプルで、バブル崩壊後の金融政策が、日本経済の長期低迷を作った。貨幣流通量を外国(欧米、韓国)並みに増やせば、円高は是正されるし、国内産業は活性化する。というもの。
2%程度のインフレターゲットの設定、日銀の買いオペの実施を積極的に行い、目標のインフレ率達成を行うと、宣言すれば、即日好転する。期待感ででも景気は好転するという。
引用している、7枚のグラフで他国との通貨量の比較と景気動向を示している。何よりも12月以来のドル・円水準、株価がこの論の正当性を立証している。恐れられる過度のインフレについては、今はその心配は無い、又インフレ退治の日銀の手腕は過去の実績からして信頼しても良いと言われる。
現在の日本のデフレは、日銀のインフレ恐怖論がベースになっており、リーマン・ショック後の円高は、諸外国に比べ通貨量の増やし方が一桁違うのが原因である。そのため韓国と日本では、60%の為替格差が生じた。これではエルピーダやソニー、パナソニックが勝てるわけはないと論じる。
日銀の白川総裁の政策を「too little、too late」、しかも本気でない。デフレ退治は日銀の仕事ではないかのように振る舞う。これが元凶だと批判をする。デフレは一時的、瞬間的には年金生活者にとって、過ごしやすいかも知れぬが、中小企業、輸出関連企業にとっては地獄の苦しみだ。
この本は、一般読者向けのせいか、デフレの詳細、貨幣通貨量の増加理論、などより、デフレ擁護者への論難(ディペート)や、日銀総裁候補の推薦(6人も名前をあげている)などに多くのページを割いているのが、私としてはちょっと不満であるが、この政策の有用性は提言通りではないかと思う。
アベノミクスの金融、財政、産業育成の3本柱の、金融政策の理解には格好の書であろう。