風月庵だより

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女子高生に睨まれて

2006-05-24 12:27:33 | Weblog
5月24日(水)晴れ【女子高生に睨まれて】
 
昨日の帰りのバスでの出来事。私の住んでいる街の駅から狭い商店街と住宅街を通り抜けて隣の駅の間を循環しているバスがある。通常のバスよりは一回り小さいバスである。それぞれの家の近くにバス停があるので利用客が割合に多い。特に老人には好評なようで、乗客は若い人よりも老人の方が多いようである。

昨日も小型バスはほぼ満員状態であった。座れるところはないものかと見ると、二人がけの座席に女子高生が一人座り、その横の席は黒のビニールバッグが占領していた。「これ、あなたの?」と私は女子校生に尋ねた。女子高生は「それがなんなのよ」という目つきで私を見た。「座らせてね」と私は言った。

女子高生は私を睨んだが、それでもバッグを自分の膝の上に置き直してくれたので、席が一つ空いた。私は立っている老人に勧めたが、「いやいや、あなたがどうぞ」と言われるので、紳士の言に従って座らせて貰った。(私も老人のうちであるが)女子高生はむっとした樣子で外を眺めている。

はてさてどうしたものだろうか。座席に自分の荷物を置いて平気な顔をしているのは、中年のおばさん、という記事を読んだことはあるが、女子高生が混んだバスのなかで、老人が立っているにも拘わらず、のうのうと座り、それだけではなく自分の荷物で無神経に座席を占領しているとは。困ったことだと、正直思った。それにつけても、女子高生に睨まれるとは、これも驚きであった。このごろは簡単に切れる子がいて、すぐにグサリという事件があるので、私も正直言いましてビビリました。

時々女子高生にはお節介をしている庵主であるが、女子高生に睨まれる経験は、はじめてのことである。先日も電車の中で前に座った女子高生に、お節介をした。足が長いので膝を合わせていないと、どうしても奥まで見えてしまうのである。それが三人も並んでいると、実に壮観である。(失礼)女性でも目のやり場に困ってしまうほどである。

そこで、「あなた方の足は素敵に長いので、お膝を合わせないと丸見えよ」と側に行ってそっと申し上げたのである。(ちょっと男性の敵であろう。)彼女たちは可愛らしく笑って「有り難う」と言った。私が電車から降りるときも「有り難うございました」とさえ言ってくれた。そんなことで、私にはあまり睨まれるような経験はなかったのである。

バスで隣り合わせた女子高生も、見れば、あどけなさの残る可愛い子である。私も睨まれるような言い方はしていないし、混んだ座席に荷物を置くことは明らかに間違いであるし、ましてよその大人を睨むなどと、このお嬢さんはどうしたのだろう。なにか嫌なことが学校であったとしても、このような反応は普通ではない。なにか彼女の生活に睨まなくてはいられないようなことがあるのではなかろうか。

このまま黙ったままでは別れ難いと思った。お節介おばさんとしては何か一言言って別れたい、と思った。このあどけない顔をしたお嬢さんが、本当はあどけない可愛いらしさが素直に出せるような一言を言えないものだろうか。まもなく私の降りるバス停だ。「年寄りに席を空けてくれて有り難う」と言おうか。いやいやそれでは大人が卑屈になる。大人が卑屈になってはならない。

バス停に着いた。私は女子高生の顔を覗き込んで言った。「有り難うね。またね。」と。女子高生の顔に、ちょっと柔らかい表情が走ったように私は感じた。また会ったとき、笑って「こんにちは」と挨拶を交わせるかもしれない。また女子高生は年寄りに席を空けようという気になってくれるかもしれない。

可愛らしい女子高生の日々が、笑いで満ちあふれるようになりますように