mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

里山の東筑波山嶺

2018-04-03 11:03:58 | 日記
 
 常磐線というのは上野から乗るものとばかり思っていた。ところが今朝出かける前に検索してみると、武蔵野線の新松戸で常磐線と接続している。そこから鈍行に乗っていくつか行き、柏で快速に乗り換えるとみごとに目的の岩間駅に行きつけた。東浦和を出てから2時間弱。これは、発見。急に茨城県が近くなった。ちょうど通勤時間帯とあって、乗り換え客でごった返している。でも、北へと向かう客はそれほど多くないから、土浦でぐんと減る。駅名を聞いて、ああ、霞ケ浦の西の端の方にいるのだなと地図を想いうかべる。
 
 岩間の駅で降りたのは私ひとり。駅舎はまだ新しい。西側にかたちの良い山が見えている。愛宕山なのだろうと、見当をつける。なにしろ、「県立愛宕吾国公園」と指定されている。愛宕山は起点として名を成している。東筑波山嶺と名づけられている山並みの最高峰・難台山552mは、愛宕山301mと吾国山518mの「中間にある山」と記されて、不遇である。今日は、岩間駅からその連峰を縦走して、福原駅に下るルート。ところがこのルートが、目下笠間市が売り出しているモデル・ハイキングルートらしく、標識がつけられ、丁寧な歩行時間が記され、なんの不安もなく、歩けるコースになっていた。
 
 岩間駅から愛宕山を目指す。街中の道路に「←愛宕山」の標識がつけられている。プリントアウトした国土地理院地図を参照し、あわせてスマホの地図とGPSをみながらすすむ。地図に「参り坂」と記された神社記号のところを覗いていみる。六所神社という名らしいが、どうしてこれが「参り坂」なのかはわからない。道は別に坂になってはいない。道端にはハナモモであろうか、赤と白の花をつけた枝が入り混じって春を謳歌している。25分ほどで登山道入り口に着く。「笠間・吾国愛宕ハイキングマップ」という大きな掲示がある。私の今日歩こうとしているルートをイラストにしている。私が見たガイドブックではこのルートを全部通して歩くのはきつすぎるとあったから、果たしてどんなものか下見に来たわけだが、これをみると、なかなか親しまれた里山の風情である。
 
 落ち葉の降り積もった登山道を上る。背の高い松が並んでいるわりには、明るい。陽ざしが入り込んでいる。車道に出くわす。サクラが満開。散りはじめているが、それを見上げながら散策している人たちがいる。登山ルートは直登していて、雨の後などは滑り易そう。50分で愛宕神社にのぼる急峻な石段の下に着く。登っていると、小さな祠と「悪態祭軍荼利様」と記した表示がある。下から登って来た中学生らしい若者に「悪態祭ってお祭りがあるの?」と聞くと、「あります」という。何月頃やるの? ときくが、さあ? とよくは知らないようだ。何だか面白そうだ。帰宅して調べてみると「日本三大奇祭のひとつ」、「悪退祭ともいう」とあるから、庶民の願いを引き受ける祭だったとみえる。
 
 愛宕神社は立派な様子をしている。でも愛宕山の山頂はどこを上るのかわからない。神主さんに尋ねた。そちらを回ってこの上の社があるところが山頂だよと教えてくれる。回り込むと正面をきっちり閉じた「飯綱神社」がある。愛宕神社を睥睨するように建っているのがなぜだか怪しげである。この神社から駐車場の方に降りると、岩間の町が一望できる展望台になる。サクラが咲き誇り自慢の街並みを見渡せるぞと、威張っているようだ。出発してから1時間15分。
 
 奥へ伸びる車道を避けるように乗越峠へ向かう道がある。また車道と出逢い、大きな看板を見てまた登山道に入る。こうして「展望台」に向かう。急な傾斜。雨でも降ると滑って登るのに難儀しそうだ。先を女の人が上っている。追い越すとき「どちらまで?」と聞かれ、「吾国山を経て福原駅まで」と応えると、「吾国山の向こう側のカタクリが今満開ですよ。ぜひご覧になってください」とすすめられる。この方は「展望台まで」足を運んでいるのだそうだ。先に展望台につく。駐車場から30分。やぐらを組んで周りの木の高さを超えるように設えてある。だが春霞に筑波山も足尾山も加波山もかすんでいる。その女の方もやってきてベンチに腰掛け、目の前のサクラを観ている。「このオオシマザクラが満開になると、ほんとうに見事なんですよ」と話す。まだ三分咲きというところか。
 
 難台山へ向かう。コブシが咲き、スミレが足元を彩る。ヤマザクラが色濃い花をつけている。長袖のアンダーウェアにポケットのたくさんついたベストだけなのだが寒くはない。いい季節になった。木の陰に入ると少しひんやりするのが、心地よい。大きな倒木があり、「通過危険」の表示に迂回を指示する書き込みがある。年老いた山でもあるのだ。団子石峠につく。出発して2時間余。車道が走っている。団子石を経て、431mのピーク、大福山と、上り下りをくり返し、獅子が鼻石と屏風岩をすぎると10分ほどで難台山の山頂に着いた。出発してちょうど3時間。いいペースだ。二組の登山者がお昼をとっている。大きな地理表示の標石が設置され、ここが石岡市だとわかる。旧岩間町は石岡市に吸収されているようだ。そしてこの先、難台山と吾国山をかける道祖神峠辺りを市境にして笠間市と棲み分けているようだが、それを連ねて県立自然公園に指定され、笠間市が「ハイキングコース」を設定したと思われる。
 
 お昼を済ませ、道祖神峠へ向かう。11時45分。目的地点までの行程時間を記した表示板がおかれている。峠まで40分、吾国山までは1時間10分とある。途中でスズラン群生地と道を分け、下りに入る。道祖神峠のところには洗心館という宿泊施設があり、野外のベンチに腰かけて四人の人がお昼を食べている。その先の切通しのところから「吾国山登山口」に踏み込むと滑り易そうな上りになる。上から降りてくる何人もの人に出会う。ここは急な上り。直登しているとふくらはぎがピンと張って攣りそうになる。だましだましゆっくり歩く。15分余で吾国山の山頂。10メートル四方の石垣を築いた土塁のなかに石組みの土台に乗せた社がある。社は北を向いている。山頂の標識は、その土塁の下に書いておいたよというふうに素っ気なく、手書きで記されている。樹々の合間から見えた山容は円錐形のかたちがいいのだが、まるでこの神社のために盛り上げられた土塁のようにみえた。13時出発。
 
 そこからほんの少し下ったところの、福原駅への分岐にあるカタクリが見事であった。ブナの木々の間につくられる日影がちょうどよい素地をつくっているとどこかの説明書に書いてあったが、大きく下方へと広がり、大小さまざまな花をつけている。これはいいが、このルートを案内する二週間後までは持たないだろうと、残念に思う。40分ほどでポンと里に出る。少し水を張った田圃が広がり、猪除けの電気柵を張り巡らしてある。いかにも里山の感じだ。先へすすむと麦だろうか、青々とした苗が育っている。その向こうにいま下ってきた難台山と吾国山への稜線がなだらかに連なる。山肌にはヤマザクラの桜色がところどころに彩を添え、間もなく山笑う季節になる気配を湛える。
 
 じつは、ここから駅までのルートが丁寧な案内標識に導かれているのだが、それを読み違ったのか、ある地点からわからなくなってしまった。二車線の道路の大きく曲がる右側歩道に「↓800m 10分」とあった。おおよそ800mすすんで左折と了解して歩数を数えながら歩いたのに、左折できるそれらしい道がない。1200mほど歩いてやっと道を見つけ左折、線路を越える。その脇にあった石材作業場に入り、そこに人に駅を訊ねると「来過ぎてますね」と道を教えてもらった。どこで間違えたあろうかと、帰宅して地図を検討してみると、最期に見た標識のところで左折して道を渡り、その道を直進800メートルののち左折すると踏切があると分かった。つまり、屈曲する道路の右側にあったので、90度違った方向へ800m歩いてしまったわけだ。ま、今度行ったときにどなたかにその標識を見てもらってどちらへ行くか尋ねてから、私の間違いを質してもよさそうだと思い、地元の人の設置した標識は疑って読み取らねばならないと心している次第。でも、良い山であった。

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