mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

フィッシング?

2024-05-27 07:03:11 | 日記
 昨日(5/26)5年ぶりに団地の管理組合の総会があった。いや、毎年行われていたのだが、2020年の総会からは「コロナ禍」のせいで、三密を避けるため、書面での遣り取りにしたり、現理事と次期理事という役員だけが出席し、その他の組合員は書面で質疑を行うという便宜を採っていたから、一応全員が出席する(ことの可能な)総会は、5年ぶりということになった。
 概ね居住者の4割程度が出席し、4割が委任状を提出し、1割余が書面で決議への賛否を表明するという恰好。ま、昔の賑わいが戻ってきた。顔触れはずいぶん変わった。そういえばこの間、何人も知り合いが亡くなっている。世代交代も進んでいるように感じる。でも、若い人が多くなったと思うのは、自分の顔が見えないからかも知れない。
 いつものように自治会総会を先に済ませ、管理組合総会を続けてやる。自治会の方は欠席して管理組合の方だけに顔を出す方もいた。議案書の裏側に記された居住者名簿を見ると、7戸が空き家になっている。不動産会社の所有という意味なのか、所有者が不在という意味なのかはわからない。加えて、賃貸に出している居室もあるから、そこの方々も組合員ではない。
 今回は、理事役員になる資格要件を緩める規約修正が提案されている。「居住者」と制限している規約を削除して「所有者」が何らかの形で理事役員を担えるようにしようという。高齢化が進んで、身体や頭が思うように働かず、理事役員を務めることができない。ワケあって人に貸して近くの実家に住んでいる人。9~10年ごとに回ってくる理事役員が5年ほどになっている階段もあり、悲鳴が上がる。これがコロナ禍の前、私が理事長を務めたころの状態であった。その後、どうなっているのか気配をみてこようというくらいの気分で、私は出席した。
 案に相違して、別の「提案」で遣り取りが混雑し、会場の借用時刻ぎりぎりまで長引いてしまった。その遣り取りが、寝ていて思い起こされ、何だか心持ちが落ち着かない。何が引っかかっているのだろう。まだ朝4時というのに起きだして、こうしてパソコンに向かっている。
 別の提案というのは「電子承認システムの導入」をするというもの。えっ、話が大きくなっている。5年ほど前に出てきた話は、管理事務所で現金の取り扱いをなくそうってことであった。それがいつの間にか、出納業務の全体に及んでいる。電子承認システムというのは、業務委託先がM銀行と提携して「e承認サービス」を行うというもの。
 それに対して質問が出された。
「M銀行に行う口座開設」というのは、現在管理組合がもっているB銀行の12口座を移すということか。
 理事長は直接それに答えることなく、「業務委託先の方が来ていますから、そちらから説明してもらいます」と応じ、委託先の社員が「全部移すことになる」と答えた。
 たぶん質問者は、銀行関係に勤めていた方ではないかと思うが、M銀行に12口座を開設できるのかと食いついた。それに対し、委託先社員は「一括口座になります」と応じて、遣り取りは暗礁に乗り上げた。
 実はこの総会の十日ほど前に「業務委託先の重点事項説明会」というのがあった。これは毎年行われている「説明会」と私は思っていて、出席しなかった。理事長は「それに出席していないで、ここでそれを言われても困る」と憤懣をぶつけた。
 だが、現在の口座の口数が12もあるというのは、それなりにワケのあったことであろう。それが変更されるということを抜きにして、こんな提案ができるのか。現在のB銀行の口座をそのままにしてM銀行に口座を新設して「e承認サービス」に踏み込むのなら、それはそれで構わない。
 そう思ったので私は「現管理口座の変更は、この提案には含まれていないということですね」と念を押すと、理事長は「それは次期理事会が考えること」と応え、資産管理口座の変更については念頭にないようであった。また、今年度の事業提案に、この口座移設の条項は入っていなかった。念を押すと理事長は「はい、入れていません」と返答があった。もう私等は知らんよということか。
 この遣り取りの何が、ワタシの胸中にわだかまりを遺したのか。
(1)「説明会」に出席していないことをもって、質問したことに(理事長が)憤懣をぶつけるのは、筋違い。「総会」における理事会の提案なのだから、理事(長)が責任を持って応答すべきである。それを委託業務先の社員に答えさせて済ませようというのは、自主管理の精神に反する。
(2)もし委託先社員の説明のように、B銀行の12口座がM銀行の1口座にまとめられるのであれば、それによって発生する「問題」がないことを「提案」に含めていなくてはならないのではないか。どんな問題があるとワタシは感じているのだろうか。業務委託先の便宜と管理組合の必要とがぶつかったときは、当然委託先の方が、その困難に対応するべきである。たとえ「e承認サービス」に踏み込むことを(管理組合が)承認したからといっても、管理組合の必要が解消されないために、移行が行えないことはありうる。そうなっても、管理組合の責任ではない。委託業者の方から、知恵を絞った提案がなされるのを期待したい。
(3)B銀行の口座が12に分かれているのは、資産管理の状況を把握するのに必要だから。共用部分の「管理費」、「共用部分の団地修繕積立金」「各棟別修繕積立金」、駐車場や駐輪場、専用庭、集会所使用料、駐車場敷金と、細かく分かれるのは、その項目にしたがって財務状況を識別して会計し、また監査しているからだ。例えば「会計監査」。会計理事が帳簿をつけ、それと口座通帳とを照合して「間違いありません」というとき、じつは、B銀行の「権威/信用」が裏付けている。もしそれをM銀行の一括口座にしてしまうと、どこが「監査」の「信用」を裏付けをしてくれるのだろうか。
(4)そもそも、「e承認サービス」になると会計理事が無用ということにならないか。業務委託先の「報告」してくる「会計」状況を、目を通して承認するとしても、(デジタル)請求書と照合し、理事長の承認を経て出金を確認するわけだから、「会計理事」が不要になる。ということは、委託業務先の「(会計)報告」に全面的に依存することにならないか。さらに「監査」が、同じ委託先の「(デジタル書面の?)報告」だけとあっては、事実上監査していないのと同じではないか。M銀行がどのように「信用」を付与してくれるのか、わからない。まさか業務委託先の「信用」保証ってワケじゃないだろうね。
(5)もう一つ気になるのは、業務委託先(のシステム)にこのように依存してしまうと、業務委託先を代えることもできなくなるのではないか。これまでにも似たようなことがあった。大規模修繕に際して「長期修繕計画案」をこの業務委託先に頼んだところ、ずいぶんと高い費用がかかるとあった。あまりに高いので、建築関係理事と修繕委員会が奔走して別の業者に見積もってもらったところ、各段に安く上がったことがあった。この業務委託先がかつての公団関係の団地に関して独占的な業務管理業者であることもあって、専横が罷り通っているのであろうと、この業者のことを見積もったことがあった。
(6)つまり、「窓口業務で現金を扱わないようにしたい」というデジタル時代の風潮に乗った提案に食いついたのをきっかけにして、委託業者がまるごと資産管理を請け負うことになり、システムを利用することを餌に、永久的に我が団地の管理を飲み込んでしまおうって魂胆ではないかとワタシは邪推している。
    *
 総会を終えて帰宅したとき、カミサンが「ずいぶんおそかったねえ」と驚いたような声をかけた。う~ん、何ともうまく説明できないのよねと思ったが、ちょうど大相撲の千秋楽の終盤。大の里と阿炎の取り組みをみていて、すっかり忘れていた。
 夕食を終え、風呂から出てTVをつけたら、鰹の一本釣りをしている場面。船縁に並んだ漁師が、長い竿をぽ~んと放り込み、すぐに力を入れて引き上げる。釣り糸の先に鰹がついて遠心力でぽ~んと後ろへ落ち、鰹が針から取れてゴロゴロと貯蔵庫へ流れ落ちてゆく。へえ、すごい。こりゃあ餌じゃなくて、引っかけてんだねと思っていた。そしたら別の場面では、餌を撒いて鰹を寄せようとしているのだが、小魚の群れに気をとられてか、鰹が寄ってこないと船長がぼやいている。えっ、餌を撒いてるんだ。じゃあ、あの一本釣りは何なのだ。そう考えるともなく思っていて、ふと今日の総会のことが浮かんだ。
 そうだ、「窓口から現金を排除する」という餌を撒いて、「e承認サービス」という針で引っ掛ける。後者の針はシステムだから、食いついたらそう簡単に外すわけには行かない。易々と、その後の手続きと流れに乗って、当団地の業務管理委託はこの管理会社に固定され、会計から何から何まですべて丸抱えになる。他方当方は高齢化が進んで、自主管理の組合業務がだんだん難しくなっている。ま、いいか。お任せで済むなら、少々高く付いても、その方が面倒がなくていい。そういうこちらの事情とも相俟って、我が管理組合・鰹はものの見事に釣り上げられてしまう。
 あっ、文字通りフィッシングじゃないか。理事長が12口座のことを次期理事会の決めることとして、丸投げしたようにみえたのは、気づかないからじゃないんだ。システムに乗っかれば、それはそれで、後はなるようにしかならないと見て取っているからだ。それに気づかないで、「現口座をかえることは(提案に)入っていない」と確認してヨシとするなんてえのは、デジタルの世の中を知らない素人もいいところか。
 バカだなあと、振り返って臍を噛んでいる。