自在コラム

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☆「7選も最低投票率」「4選も67票差」どう読むか

2018年03月12日 | ⇒ニュース走査

    石川県知事選、そして輪島市長選がきのう11日、投開票が行われ、知事選は現職の谷本正憲氏が7回目の当選、輪島市長選は現職の梶文秋氏が4選を果たした。選挙はなんと言っても数字がすべてを物語る。結論から言う、知事選の投票率は過去最低の39.07%、輪島市長選は67票差の勝利だった。これを数字的にどう読むか。

    全国最多となる7選を果たした谷本氏の当選確実は投票が締め切られた午後8時00分、ほぼ同時にテレビ各社が選挙速報が打った。「石川県知事選 谷本正憲氏の当選確実」と。テレビ各社は投票段階で出口調査(投票所の出口で、投票を済ませた有権者に誰に入れたか記入してもらう)のデータを得て、2位の候補者と10ポイント以上の開きがあることを「基準」に速報テロップを流す。今回の知事選では、現職の対抗馬は無所属の新人で、共産党が推薦する候補者だった。開票結果を見ても、現職谷本氏は28万8531票、対抗馬の候補者は7万2414票、圧勝だった。

    ただ、投票率は過去最低の39.07%だった。とくに、金沢市の投票率は30.68%、隣接の野々市市は30.36%と両市がダントツに低い。金沢市の場合は県議補選もあり、投票の「相乗効果」が期待されたにもかかわらずである。天気も時折晴れ間ものぞき、選挙には決してマイナスではなかった。では、なぜ過去最低の投票率となったのか。現職の多選批判もあったかもしれないが、そんな単純な話でもない。なにしろ、過去最低の投票率でも現職は前回(2014年)より得票数を3300票伸ばしているのだ。

    市町別の投票率を比べてみると、全体に前回より4ポイントほど投票率を落としている市町が目立つが、7ポイント下がったのは金沢市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町だ。この5つの地域には共通項がある。それは、大学や短大、高専が立地している地域だということだ。選挙権を20歳から18歳に引き下げたのが2016年。それ以降、今回は初めての知事選。有権者数も前回に比べ1万7千人増えて95万人になっている。

    以下は憶測だ。投票率を下げた原因は、18歳、19歳の棄権率が高かったからではないか。とくに、県外からの学生たちにとっては現職の名前すらも知らないとう学生が多いのではないだろか。学生層にとって知事選は皮膚感覚として離れているかもしれない。自分がその身だったら果たして投票に行っただろうか。きのう午後、投票場に出かけたが、確かに若者らしき姿を見かけなかった。県選挙管理委員会による今回知事選の年代別投票率のデータ公開が待たれる。

    輪島市長選もデータとして興味深かった。市長選の投票率は69.92%だった。同市の知事選の投票率も70.16%と市長選と知事選の相乗効果が表れている。4選を果たした梶氏は元市役所職員、対抗馬も元市役所職員。同市に住む知人から聞いた市長選の下馬評は梶氏の圧勝だった。「なにしろ市会議員17人のうち12人が現職を担ぎ、対抗馬を支持しているのは1人だよ」と。そう聞かされていたので、テレビの速報テロップも知事選に次いで流れるだろうと予想していた。が、なかなか出ない。それもそのはず、現職8389票、対抗馬の候補者は8322票でわずか67票差。テレビ各社が梶氏当選の速報を打ったのは午後11時40分。わずかな票差のため、テレビ各社は票が確定するまで速報は打てなかったようだ。

    大接戦となった理由は何だったのだろうか。産業廃棄物処分場問題がくすぶっているのかもしれないと考えた。昨年2月19日に同市門前町大釜地区で計画されている産業廃棄物処分場の建設の是非をめぐり、住民投票が行われたが、投票率は42.02%で規定の50%を下回り投票は不成立となった。住民投票をめぐって、建設推進の市議らが「棄権」を呼びかけた経緯があり、当時「投票の自由を妨げる」と一部住民側から問題視する声が出ていた。梶氏はこの不成立の結果を受け、その後粛々と処分場の受け入れを進めている。

    そうした経緯での今回の市長選だった。対抗馬の候補者は「業廃棄物処分場は負の遺産だ」と訴えていた。薄氷の勝利であろうと選挙の勝ち負けははっきりしている。が、産業廃棄物処分場問題の根深さが噴き出した。そんな開票結果ではなかったか。

⇒12日(月)午後・金沢の天気    はれ


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