自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★続・東京一極集中を問う都知事選が面白い

2016年07月12日 | ⇒トピック往来
   14日の東京都知事選の告示に向け、自民党都連の推薦を得た増田寛也氏(元総務大臣、元岩手県知事)には『東京消滅~介護破綻と地方移住~』(中央公論新社)という著書がある。若者が集まる首都東京だが、そのバックヤードでは大変なことが起きている。団塊の世代が75歳以上となってくる2025年度には、東京圏では75歳以上の高齢者が175万人増加し、医療・介護施設が元々不足している東京圏では将来、介護施設を奪いあうことになりかねない、というのだ。このとき、地方の介護人材(ホームヘルパーや介護福祉士など)が東京圏に集中すれば、まさに「地方消滅」に拍車がかかる。東京発のこの日本の危機を脱するために、地方への移住を含めた抜本的な解決策が必要というのが著書の内容だ。まさに、東京オリンピック後にやってくる「不都合な事態」なのだ。

  報道によると、増田氏は昨日(11日)都庁で記者会見を開き、正式に立候補を表明した。増田氏は「この4年間で都知事3人が代わり、都政は停滞、混乱している。東京都に必要なことは積み重なった課題を早く解決することだ」と意欲を述べている。その取り組む政策として、「三つの不安の解消」と「三つの成長プラン」を提示した。

  解決すべき不安として、①子育て②超高齢化社会③首都直下地震などの災害をあげた。待機児童を解消するための緊急プログラムも策定すると述べた、という。三つの成長プランは①東京オリンピック・パラリンピックの成功②観光の一大産業化③2020年の後の東京発展の道筋、を示した。冒頭で述べた、東京発のこの日本の危機を脱するための方策は確実にやってくる。その心の準備と政策の備えができるのは増田氏以外の立候補予定者では無理だろう。


  増田氏はこれまで、著書や講演で東京への一極集中の弊害について論陣を張ってきた。今回会見では、総務大臣時代に、東京など大都市に集中した法人事業税を地方に再配分する税制改正を手がけたことなどが記者から問われたようだ。これに対して「一極集中は東京にマイナス面がある。東京や地方が抱える問題を先頭に立って解決したい」と述べている。法人事業税は本社がある東京だけに使うべきではない、支店や工場がある地方にも再配分するべきというのは道理である。しかし、東京にいると地方の実情は見えないだろう。それを税制改正を通じて見るようにしたのは増田氏の功績である。

  これまで東京一極集中を批判的に論じてきたことについて増田氏は「東京が日本全体をけん引することで、地方と共に繁栄する真の共生社会を実現する」と述べた。これまでの東京都のリーダーにはなかった地方目線ではないだろうか。いまの東京都知事に必要なのは、近未来を見据えた東京圏と地方の共存の道筋を模索する発想だと思う。

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