自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「漢字&カタカナ」仕事の名刺

2005年11月19日 | ⇒キャンパス見聞

  私の仕事もカタカナ職業の一つだ。しかも初めに4字の漢字がつき、合わせて12文字にもなる。名刺を交換すると、「地域連携コーディネーターってどのような仕事ですか」とよく問われる。当初、返答に窮した。なにしろ、金沢大学の制度としても新しく、手本となる先輩もいない。手探りの毎日である

   所属する金沢大学社会貢献室には3人の地域連携コーディネーターがいる。私は民間のテレビ局を途中退社した転職組、石川県庁OBで農業関連のスペシャリスト、そして県内の私学の理事が「出向」というかたちで派遣されている。この顔ぶれだけでも国立大学法人としては異色と映るだろう。

  では、具体的にどのような活動を行っているのかというと、大学の社会貢献の柱の一つ、「里山プロジェクト」をケースに紹介したい。このプロジェクトは、かつて金沢の里山でもあった角間キャンパス(201㌶)の一部を地域の人たちに開放し、社会教育や子どもたちの活動の場として使ってもらおうという事業だ。これまで650人余りが登録し、自然観察や農業体験、森林や竹林の整備、藍染などと幅広く活動を展開している。これらの活動を総称して「角間の里山自然学校」と呼んでいる。

  先日、ひきこもりの子どもたちをサポートしているNPOのスタッフが子どもたちを連れて里山自然学校にやってきた。「活動に参加させてほしい」という。子どもたちはコンピュータに興味があるというので、コンピュータ・グラフィックス(CG)でバッタのジャンプを再現している大学院生に頼んで研究室を案内してもらった。研究室から帰ってきて、寡黙だった子どもたちが少し話すようになっていた。11月初めにあった大学祭では、里山自然学校が出店するドングリを使った工作の店を手伝ってもらった。随分と忙しい思いをしたらしい。

   かつて金沢城内にあった金沢大学の教員や学生は旧制四高の時代からの気風を受け継ぎ、地域の人たちとよく交わった。それが平成に入り総合移転した。金沢大学がいち早く社会貢献室を組織して地域の人たちと接点を持とうとしているのは、疎遠になりがちな地域とのよき関係を続けたいとのアピールである。大学に対する地域のニーズは限りない。われわれコーディネーターはその「橋渡し」を担っている。ただしマニュアルはない。

   (※今回の「自在コラム」は週刊「教育資料」2005年11月14日号で掲載された記事に一部加筆して転載した)

  ⇒19日(土)朝・金沢の天気  くもり 

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★松井、NYの存在感

2005年11月18日 | ⇒トピック往来

  日本のどんな小さなローカル局でも、アメリカ大リーグ(MLB)の映像を使おうとするとシーズン契約の映像使用料として150万円以上は覚悟しなければならない。これが日本全体のテレビ放映権料となると330億円にも積み上がる。そして、ヤンキースタジアムには建設機械メーカー「コマツ」など日本企業の広告が目立つ。こうした経済効果はニューヨークに拠点を構える松井秀喜選手の影響が大きいのは言うまでもない。

   ここ数日、テレビも新聞もヤンキースと4年で総額5200万㌦(61億8800万円)で再契約した松井選手の話題で持ちきりだ。16日、ヤンキースタジアムでの記者会見に日米70人もの報道陣が詰めかけた。会見内容を報じた新聞記事によると、会見に同席したブライアン・キャッシュマン・ゼネラルマネジャー(GM)は「彼は、チームの勝利に貢献するだけではない。日本からの関心を呼んで、ビジネス面でもニューヨークに貢献した」と好条件で契約した理由を述べた。要は、多大なジャパンマネーをもたらしてくれる松井選手を4年間囲い込んだ、と説明したようなものだ。

   およそ100年前、同じニューヨークで存在感をアピールした、松井選手と同じ北陸ゆかりの人物を思い浮かべる。高峰譲吉博士だ。加賀藩典医の長男として生まれ、長崎をへてイギリスに留学、1890年 に渡米した。高峰博士は世界の常備薬ともいえる「タカジア-スタゼ胃腸薬」の発明者であり、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)の発見者として知られる。

   ただの化学者ではなかった。世界的な発明と発見で財を成した高峰博士は1905年、ニューヨークに日本人クラブを創設して初代会長に。外交官的なセンスも持っていて、当時のウィリアム・タフト大統領の夫人がポトマック川に桜の植樹をする計画を公表したのを知り、東京市長(尾崎行雄)から桜の苗木3000本を贈ってもらい、自らニューヨークで桜の植樹運動の中心となった。その桜が育ち、今では、全米各地の「桜の女王」が集いフェスティバルが開かれるなど日米親善のシンボルとなっている。

   いまの松井選手の業績は高峰博士に届いているか。否である。ヤンキース在籍3年間の成績は487試合に出場し、70本塁打、330打点、打率2割9分7厘をマークしているが、物足りない。しかも、上記のGMのコメントのように、彼の球団での存在意義は日本人と日本企業がもたらす経済効果によるものなのだ。自らのバットでワールドシリーズ制覇という金字塔を打ち立てなければ確たる存在感は示せない。それを実現して日米野球のシンボルとなれ、と。応援したい。

⇒18日(金)朝・金沢の天気  くもり

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☆会議をメディア化する

2005年11月17日 | ⇒キャンパス見聞

  何事も新しい技術や挑戦がなければ進歩というものがない。霊長類学者の河合雅雄氏を招いて開くシンポジウム(12月17日・朝日・大学パートナーズシンポジウム「人をつなぐ 未来をひらく 大学の森―里山を『いま』に生かす」)=金沢大、龍谷大、朝日新聞社共催=ではどのような新しい挑戦があるのかというと、仕掛けは「テレビ会議」である。このシステムにはいろいろな意味が可能性が込められている。

   シンポジウムは京都・龍谷大学と金沢大学の2会場で同時開催だ。2つの会場を光ファイバーの高速回線で結び、中継で基調講演、そしてパネルディスカッションと進める。つまり、双方の会場がやりとりをしながら進むのだ。ちなみに、河合氏には金沢会場で基調講演をしていただく。これを同時に龍谷会場の参加者も聴くことになる。これにはテレビ局の中継という手法が必要だ。あからじめ進行のシナリオ台本を作成し、これをもとに双方の会場のカメラマンが次のシーンを想定して画面を構成していく。ちょっとした生番組なのだ。

   これを収録しておけば、記録映像として使え、デジタル加工すれば教材用のDVDにもなる。もちろん、リアルタイムのストリーミング配信をすることでインターネット中継も可能となるが、今回のプログラムにはない。言いたいのは、シンポジウムにテレビカメラを入れることで、シンポジウムがさまざまにメディア化するということだ。

   このテレビ会議はシンポジウムのあり様も変える。大学間で共通テーマを論じる際、一つの会場に集まる必要がないからだ。北海道と九州の大学が「ラーメンと地域経済」を論じる、とする。主催者側からすれば、一つの会場より参加者を多く集めることができるというメリットがある。もちろん一つの会場に集まる旅費などを考えた場合、コストカットできる。国立大学法人であれば、すでに大学間は光ファイバーで結ばれているので通信コストも気にする必要がない。

   「テレビ会議」というと、いまテレビで流れている日本アイ・ビー・エムのCMような大手企業の会議をイメージするが、それだけでは狭い。ましてや、インターネットのためだけに光ファイバーがあるのではない。もっと大学間の授業やシンポジウムなどアカデミックに使われていい。テレビ会議システムと光ファイバーを使いこなすことでシンポジウムを面白く価値あるものに演出できるのはないか、そう手ごたえを感じている。

 ⇒17日(木)朝・金沢の天気  くもり

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★続・「伝説の天才」に会う

2005年11月16日 | ⇒キャンパス見聞

  15日付の「自在コラム」で紹介した霊長類学者、河合雅雄氏は現在、NHK教育の番組「知るを楽しむ」の月曜企画「この人この世界」(8回シリーズ・午後10時25分-50分)に出演中だ。これまでの番組で、1953年、宮崎県の幸島(こうじま)で「イモ洗い」のサルが発見され、その洗いの行動が食物カルチャーとしてサル集団に定着する様子を観察し、世界的な評価を受けたことなどが紹介された。その河合氏がいま一番気にかけて取り組んでいることが2つある。里山と子どもたちのことだ。

  朝日・大学パートナーズシンポジウム「人をつなぐ 未来をひらく 大学の森―里山を『いま』に生かす」に講演をいただくために、先日、兵庫県篠山市の自宅を訪ねた。その折りも、河合氏はこう話した。「いまは里山というのが一種のブームで、里山の復元などの活動が行われていて、それはそれで結構なことだ。しかし、里山を何のために復元するかという理念がいまひとつはっきりしない」といぶかった。続けて、「日本人はもっと森あそびをすればいいのに」と。「あそぶ」ことでカルチャーとして定着する。自然保護や環境保全のためという目的だけでは息苦しい、長続きしない、との意味に私は受け取った。河合氏の基調講演のタイトルはこの「森あそび」の話からつけた。

  子どもたちと自然とのかかわりについても関心を寄せ、 「子どもたちから自然を取り上げたのは大人。子どもたちに自然を返してあげる努力を大人がしなければ…」と。その試みの一つが自らのアイデアで始めた「ボルネオジャングル体験スクール」だ。館長となった兵庫県人と自然の博物館の取り組みとして1998年から続けている。同博物館と提携したマレーシアの大学の原生林保護区でのキャンプに子どもたち20人余りを連れて行く。漆黒の闇を遠足したり、80㍍もある木登りも自由にさせる。ある種のショック療法だが、「子どもたちは確実に変わるよ」と目を細めた。81歳。草山万兎(くさやま・まと)のペンネームで子ども向けの本も書き続けている。

  NHK教育「知るを楽しむ」の7回目(11月21日放送)は「里山復興と宮沢賢治」、最終回となる8回目(11月28日放送)は「シートンと私の動物記」がテーマだ。夢多き宮沢賢治とシートン、そして「天才」河合雅雄氏の夢もまた枯れてはいない。

 ⇒16日(水)朝・金沢の天気   くもり

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☆81歳、「伝説の天才」に会う

2005年11月15日 | ⇒ランダム書評

 チンパンジーとオランウータンはどちらが賢いか。チンパンジーには枝を使ってシロアリを釣る、あるいは、石を使ってアブラヤシの堅い実を割るといった道具使用行動が見られるのに対し、オランウータンはおっとりしていてどちらかたというとチンパンジーの方が知能が高いように思われる。そこで、簡単な錠がかかった箱からバナナを、どちらが早く取り出すか実験が行われた。

 チンパンジーは箱をゆすったり、錠をいじくったりするが、開かないので跳び上がったりしてにぎやかに試行錯誤を繰り返す。これに対し、オランウータンは最初ゆっくり近づき箱や錠をいじくるが、すぐに離れる。一見ボーッと座って関心がないように見えるが、そのうち急に体を起こして箱に近づき、確信に満ちた手つきで錠を開けてバナナを取り出す。結局、チンパンジーもオランウータンもバナナを取り出す所要時間はほぼ同じ。つまり、知能程度はそれほど変わらないのである。所作が違うだけだ。

 上記のことは京都大学名誉教授で霊長類学者の河合雅雄氏が著した「子どもと自然」(岩波新書)の中で記されている。河合氏が言いたかったのは、実は人間にも2種類のタイプがあって、活発で積極的な子は評価されるが、ボーッとして懐疑的でスピード感がないオランウータンのタイプの子が損をするのがいまの日本の教育制度ではないのかと問題提起をしているのである。霊長類の進化をベースに、人間社会を照射する数々の洞察には心が打たれる。

 先日、著者の河合氏を兵庫県の自宅に訪ねた。12月17日に朝日・大学パートナーズシンポジウム「人をつなぐ 未来をひらく 大学の森―里山を『いま』に生かす」に河合氏をお呼びする。その打ち合わせのためだ。河合氏は京都大学で「伝説の天才兄弟」と呼ばれた河合兄弟の兄、弟はいまの文化庁長官、隼雄氏である。実際に言葉を交わすと、頭脳明晰でアイデアが斬新、しかも20年前の数字、人名、理論もスラスラとよどみなく口から沸いてでてくる抜群の記憶力。天才とはこういう人のことをいうのだと、同行した大学教授(複数)が言う。どんな思索の空間があるのだろうかと、「河合先生、書斎を拝見させてくださいませんか・・・」と水を向けてみたが、「本が散らかっているから・・・」とこれは断られた。81歳。眼差しが優しい好々爺とした風貌である。

 12月17日のシンポジウムでの河合氏の講演は龍谷大と金沢大どちらでも聴くことができる。講演タイトルは「森あそびのすすめ」。市民の参加は自由。

⇒15日(火)朝・金沢の天気  くもり  

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★ウォームビスと「青いドレス」

2005年11月12日 | ⇒トピック往来

   ウォームビズの実践を始めた。郊外の丘陵にある金沢大学ではこの春、築280年の古民家を再生し、ここで勤務する我々はなるべく省エネや化石燃料を使わない生活様式を工夫している。この夏は扇風機で十分しのぐことができた。土間が天然のクラーラーになった。そして北陸の冬。体感温度は金沢の街より1度か2度低い。そこでセーターや厚手のズボンを早々と着込んだ。しかし、冬本番はこれからである。折に触れて、ウォームビスの実践記はこのコラムで報告したい。

                 ◇

   11月2日付の「ショート・ショートな話」では、第三次小泉改造内閣の認証式で少子化の担当になった猪口邦子氏の「青いドレス」を話題にした。なぜ「青」だったのかという理由が、「小泉内閣メールマガジン」(10日配信)で分かった。以下、本人の弁である。「・・・長い不況のトンネルの先に見える青い空。小泉構造改革とは、苦労の多いプロセスを一歩一歩推し進めながら、経済のグローバル化という世界共通の試練のなかで、日本が再び青空に出会えるようにするためのものと改めて思い、その閣僚チームに入る喜びがこみ上げてきました。改造内閣発足では、新任の閣僚は皇居にて認証式に臨みますが、そのときの直感で、礼服の色は青空の色!と思ったのです。」

   回りくどい言い方ではある。アメリカやヨーロッパでは青色は公式な場では認められた色だ。亡きダイアナ妃は青のドレスが一番似合っていた。国連の軍縮大使などで活躍しレセプションを数多くこなした猪口氏にとっては青の礼服は常識なのである。おそらく青は好きな色でもあるのだろう。だから、「突然の指名」でとっておきの青のドレスをとっさに選んだ。しかし、認証式では周囲に「黒」が多く、ちょっと浮いて見えたというだけの話である。

   ただ、ドレスの広がりがちょっと目立つ仕立てだったので、とくに、こうして並んで立つとステージ上の「オペラ歌手」にも見えたということだ。マスメディアが騒ぐ話ではない。

 ⇒12日(土)朝・金沢の天気   くもり

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☆NHKのディープインパクト

2005年11月07日 | ⇒メディア時評

   部下の不始末とは言え、次々と不祥事が起き、そのたびに頭を下げているNHKの橋本会長の姿を見ると気の毒になってきた。

      きのう6日午前11時からの、総合テレビの番組「永井多恵子のあなたとNHK」に橋本会長が出演し、大津放送局の記者(24)が放火未遂容疑で逮捕されたことに関し、深々と頭を下げて謝罪した。心の中では泣いていたと思う。「もう勘弁してよ」と。私だったら、番組の後、職員を一堂に集め「いい加減にせいよ。オレに何度謝らせるんだ。全員辞めちまえ」と啖呵(たんか)を切る。

  逮捕された記者の犯行の動機がよくつかめない。自ら放火し、それをスクープ映像として放送するのであれば、功名心を焦った「マッチポンプ屋」とでも言えるかもしれない。ところがこの24歳は通報したり、偶然発見したことを装って消火したりと、仕事にリンクしていないのである。5月15日(日)未明の火災現場近くで警察から任意で事情聴取を受けた際、本人は酒に酔っていた、と報じられている。また、別の紙面では、「休みがほとんどなく、泊まり勤務も大変だ」などと他社の記者に愚痴をこぼしていたらしい。つまり、プレッシャーに弱い24歳が酒の勢いで放火に及んだという割と単純な構図なのだろう。

   事情聴取を受けた翌日から傷病休暇をとって、入院した。うがった見方をすれば、警察にマークされたのに気づき、あわてて病院に逃げ込んだのだろう。ところが、尾行がついているとも知らずに、6月5日(日)未明、性懲りもなく放火を繰り返した。この時の火は尾行していた捜査員が消したのだから動かぬ証拠となった。それが現行犯逮捕ではなかったのは、入院という状態だったからだ。警察は、10月末に本人が退院したのを見届けて、主治医と相談しながら本人の責任能力が問えると判断し、逮捕に踏み切ったのだ。

   もう一つ、逮捕がこのタイミングだったのは第三次小泉改造内閣の組閣が終了するのを待っていたのかもしれない。ある意味で「大捕り物」である。何しろ各紙は1面あるいは社会面のトップで見出しを立てた。これが組閣といった大型のニュースとぶつかってしまうとその価値は相殺され、扱いは小さくなる。このため警察は逮捕のタイミングを十分に見計らっていたはずだ。

   それにしても橋本会長は責任を取って辞めざるをえなくなるのではないか。 ことし1月25日に海老沢氏の後を引き継いで会長に就任して以降、つまり在任中のこれだけの不祥事である。今回の逮捕をきっかけに滋賀県ならびに関西を中心に受信料不払いという「うねり」が年末にかけて起こるのは目に見えている。今の状態では大晦日の「紅白歌合戦」の番組ですら危うい。今回の事件の衝撃は計り知れない。

⇒7日(月)朝・金沢の天気  くもり 

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★テレビの経営環境と近未来

2005年11月04日 | ⇒メディア時評
  2日に大阪市で開かれた民間放送全国大会の会場に立ち寄る機会を1時間余り得た。民放大会は経営陣が集まる会合で、どちらかというと「大人(おとな)しい」というイメージだったが、2つの点でかなり熱いものを感じた。

   一つは、「ライブドアとフジテレビジョン」、そして現在進行形の「楽天とTBS」と続くIT企業とテレビ局(東京キー局)をめぐる株式の争奪戦、経営統合問題である。まさに経営の根幹にかかわる事態だ。民放大会では「テレビとインターネットの融合に向けて」と題するシンポジウムが開催され、ネット企業トップやテレビ局幹部らが議論を繰り広げたようだ。「ようだ」というのは私は直接この議論を聞いたわけではないので、翌日の新聞報道から内容を以下引用する。

   議論の中で、ヤフーの井上雅博社長は「技術的に通信基盤で番組を流せるようになった結果、情報の流通業でもあるネット企業がテレビ番組を使いたいと考えるのは自然な流れだ」と述べた。これに対し、フジの飯島一暢上席執行役員は「ITと放送は異なる文化。連携はあっても融合するのは難しい。ただ、ネットの色々なものを取り込もうと努力している」と企業文化の違いを中心に説明した。飯島氏が言いたかったのは、いきなり土足で上がりこんできて、「あなたが好きだ」とプロポーズされるようなもので、そのような発想は今のテレビ業界は到底受け入れられるものではない、と言っているようにも読める。

    私が直接見て感じた今大会の「熱さ」のもう一つが「ワンセグ」である。まもなく実用化される最新技術をいち早く体験できるあって随分とにぎわっていた。地上デジタル放送の電波を構成する13セグメント(区分)の1つを利用して、携帯端末向けに番組(簡易動画)を放送する仕組みで、地上デジタルとは違った内容で放送となり、「ワンセグ放送」と呼ばれる。いまでも一部の携帯電話でアナログテレビ放送を視聴できるものもある。が、テロップ(字幕)までは読めない。ところが、ワンセグ放送では携帯の画面サイズに最適化された放送が実現され、テロップも読める画質だ。テレビ局が「ケータイの世界」に入り込む突破口になると期待されているのだ。

   このようにテレビには「次ぎ」の可能性が広がっている。IT企業はそこを見込んで、業務提携や経営統合とプロポーズをかけている。テレビ業界の経営環境と近未来が凝縮された大会だったと言えるかもしれない。

⇒4日(金)午前・金沢の天気   はれ

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☆ショート、ショートな話

2005年11月02日 | ⇒トピック往来

  最近街角で拾った、ちょっとした話を続けて。題して、「ショート、ショートな話」ー。

   石川県能登半島にある旅館のご主人の話。この人は地元で「キノコ採りの名人」として知られる。そのご主人が言うには、秋になって山に入ると、同じ石川県でも遠く離れた加賀地方の人たちがジネンジョ(山芋)を掘りに来ている。先日、「なぜわざわざ奥能登に」と尋ねると、小松市から来たという人は「小松の山は最近クマやイノシシが出るんですわ。能登の山はクマが出ないので安心して…」と。

    第三次小泉改造内閣が発足した翌日のきのう、通勤バスの中で耳にはさんだ話。前の席で女子大生2人がおしゃべりしている。(A子)「猪口邦子って人、知ってた」、(B子)「ソレ何っ」、(A子)「新しい内閣で少子化の担当の大臣になった女の人」、(B子)「・・・?」、(A子)「その人、小泉さんと並んで記念写真を撮ってたんだけど、青いドレス来て、なんかオペラ歌手みたいで、浮いとったよ」、(B子)「オペラ歌手?」、(A子)「・・・!」 

    毎日新聞北陸版で金沢医療センター(旧国立金沢病院)の吉村光弘医師(内科)が書いている医療コラムを楽しみにしている。10月18日付の出だしで、「中世のヨーロッパでは散髪屋さんが使い慣れた刃物で皮膚のできものを切開して膿(うみ)を出していた。理髪店のくるくると回転する筒状の看板はそのなごりで、赤が動脈、青が静脈、白はリンパ(あるいは包帯)を表している。」と。納得というより、ちょっとリアリティーのある話だ。

    季節はちょっとずれるが、ヒガンバナ(彼岸花)は割と好きな花だ。植物に詳しい友人はこんな話をしてくれた。ヒガンバナは茎にアルカロイド(リコリン)という毒性がある。昔の人は死体を焼かずに埋葬した。そして、犬が近づいて掘り返さないようにと毒性のあるヒガンバナを周囲に植えたのだという。犬よけの花、知らなかった、こんな話…。

 ⇒2日(水)朝・金沢の天気   はれ   

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★「ネット選挙」の読み方

2005年11月01日 | ⇒トピック往来

  この政治家のブログは実に分かりやすい。世耕弘成・参議員のことである。この人との面識はない。ただ、ブログの書き方がいかにも誠実で、信頼がおける。時々ブログ「世耕日記」をのぞくと、珍しい鉱物の原石にでもめぐりあったような発見がある。

  以下、世耕氏のブログの10月26日付の抜粋である。「…選挙制度調査会へ移動。鳩山邦夫会長からインターネットを使った選挙運動に関するワーキングチームの設立について諮られ、了承。私が座長を務めることになった。いよいよ自民党として本格的な選挙運動でのネット解禁検討に入ることになる。・・・」

   9月14日に最高裁が判断した「在外選挙権訴訟」の違憲判決を受けて、2007年の参院選では、インターネットの選挙利用が解禁になる見通し。自民党はすでに最高裁判決前の9月9日の党選挙制度調査会で「選挙におけるインタ-ネット利用に関する小委員会」(仮称)の設置を決めている。また、民主党も以前からインターネットの選挙利用解禁に積極的で、早ければ来年の通常国会にも公選法改正案が議員立法で提出される。07年夏の参院選は「ネット選挙」あるいは「ブログ選挙」となることは想像に難くない。

    前述の世耕氏のブログは、「ネット選挙」のかなり具体的なところまで話が進んでいることを窺わせる。そして、自民党の選挙制度調査会ですでにワーキングチームがつくられ、その座長に世耕氏が就任したこと自体が興味深い。彼は先の総選挙では自民党の広報本部長代理として「コミュニケーション戦略チーム」を率いた、メディア対策の中心人物だ。その彼が注目されたのは、選挙公示前の8月25日にメールマガジンの発行者やブログのユーザー(ブロガー)33人と党幹部との懇親会を開いたことだった。新聞やテレビの既存メディアと同等に、ブロガーにも政党幹部との懇談の場を設けた。これは画期的だった。彼の視野にはインターネットはすでにメディアであるという位置づけができているのだ。

    世耕氏はその柔軟な発想で07年参院選の「切り込み隊長」になるのは間違いない。その切り込みの「武器」がインターネットであり、ブログなのだ。きのう第三次小泉改造内閣が発足した。この顔ぶれを見ると、大方の予想では、「次ぎ」は安倍晋三だ。「党の新しい顔」と「新しい選挙対策の顔」がそれぞれ見えてきた。次回の国政選挙をこのような筋目で読んでみるもの面白い。

 ⇒1日(火)朝・金沢の天気   はれ

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