自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆チャンネルレビュー2006「視聴率」

2006年12月31日 | ⇒ドキュメント回廊

 ことしのテレビの年間視聴率(1月1日-12月24日)のランキングが30日付の北陸中日新聞で掲載されていた。サッカー・ワールドカップやトリノオリンピックなど大型のスポーツイベントがあり、総合ベスト10のうち、スポーツが9つも占めるという結果になった。そこから何が見えるのか。視聴率の調査会社「ビデオリサーチ社」が公開している視聴率データ(関東地区)をもとに振り返る。

  ことしの総合トップは52.7%で「サッカー・2006FIFAワールドカップ 日本VSクロアチア」(6月18日・テレビ朝日)だった。試合はドローだったが、175分の緊張感はこのゼロの試合展開で保たれ、高視聴率に結びついた。以下8位まで「ワールド・ベースボール・クラシック」「ボクシング・亀田兄弟ダブルメイン」「トリノオリンピック」と続く。9位にようやくドラマ「HERO」31.8%(7月3日・フジテレビ)がランキングされてくる。そして、10位で「ボクシング・世界ライトフライ級 亀田興毅VSファン・ランダエタ」となる。つまり、年間の高視聴率10番組のうち、9つもスポーツものがランキングされた。

  数字だけを眺めれば、日本のテレビ局はスポーツコンテンツに頼らざるを得ないのか、という気分になってくる。が、つぶさに数字を追っていくとスポーツ番組の中で異変が生じているのが分かる。

  3月21日の「ワールド・ベースボール・クラシック」43.4%は、キューバとの決勝に勝ち日本が世界一となったため。しかし、これを除けば、日本のプロ野球コンテンツは上位にランキングされていないのである。序盤に巨人が首位を快走しながら数字が伸び悩み、巨人の負けがこみ出すとさらに低下した。そして、7月の巨人戦ナイターの月間平均視聴率が7.2%に落ち込むと、フジテレビが8月以降の地上波での中継をやめるという事態になった。

  さらに、読売グループの日本テレビは来季の巨人戦の主催試合(72試合)について、地上波は40試合しか放送しないと発表した(12月14日)。系列のCS放送では全試合を放送する。つまり、もう地上波の放送コンテンツとして営業的に限界線を超えているとの判断だろう。

 ちょうど10年前の1996年の視聴率ランキングでは、日本シリーズ第2戦・巨人VSオリックスと総選挙開票スペシャル番組を同一画面で見せた日本テレビが43.3%を稼ぎ、年間ランキングで2位。ほかにもベスト10のうち、巨人戦がらみの3つの中継番組が入った。こうした数字とことしを比較すると、日本テレビの危機感は相当のものだろう。民放キー局の9月中間決算でも、日本テレビの売上高は対前年同期比でマイナス5.5%となり他キー局に比べ際立った。

  スポーツ以外の番組視聴率はどうか。世界で起きていることを事実に基づき検証するといった報道番組となると、「教育・教養」のジャンルで10位にランキングされてる「筑紫哲也・安住紳一郎NYテロ5年目の真実」17.4%(9月11日・TBS)ぐらいである。それではエンターテイメントの娯楽番組はいうと、これは1位が「SMAP×SMAP」26.6%(3月13日・フジテレビ)。視聴率とすると悪くはない。「面白くなければテレビではない」のフジテレビは健在だ。

  そこで注目が集まるのは、きょう31日夜のNHK紅白歌合戦の視聴率だ。かつて大晦日の風物詩、あるいは国民的行事とまでいわれた番組も2000年以降、一度も視聴率50%を超えていない。面白いのは、フジテレビはきょうの紅白歌合戦に最近人気のフィギュアスケートをぶつけてくる。全日本選手権を制した浅田真央ら大会上位選手が顔をそろえる華やかなアイスショーの収録もの。さらにNHKはこれを意識して、紅白歌合戦の特別ゲストにトリノオリンピックのフィギュアスケート金メダリスト、荒川静香を起用している。

  不祥事が続き、受信料不払い、命令放送などなど、この1年も揺れに揺れたNHKはこの番組だけは死守したい。あやかれる人気にすべてあやかりたい、そんな思いが滲む。おそらくNHKの目標は1部40%(前回35.4%)、2部45%(同42.9%)だろう。しかし、他のマスメディアの関心事は2部が40%を切るかどうか、その一点に違いない。NHKを見る目線はいまだに厳しい。

 ⇒31日(日)午後・金沢の天気  はれ 


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