自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆企業版パーマカルチャーの時代 

2021年01月30日 | ⇒トレンド探査

   このブログで「パ-マルチャー」という言葉を何度か使って、リスクヘッジと人間の行動の解析を試みた。パーマネント・アグリカルチャー(パーマカルチャー=Permaculture、持続型農業)の略語だ。農業のある暮らしを志す都会の若者たちの間で共通認識となっている言葉だ。農業だけではなく、地域社会の伝統文化を守ることで自分を活かしたいと考えている若者たちも多く見受けられるようになった。

   このパーマカルチャーの発想で若者たちの地方への流れができたのは直近で言えば、2011年3月の東日本大震災のときだった。金沢大学が2007年度から能登半島で実施している人材育成事業「能登里山マイスター養成プログラム」の2011年度募集に初めて東京からの受講希望が数名あった。面接で受講の動機を尋ね、出てきた言葉が「パーマカルチャー」だった。里山や農業のことを学び、将来は移住したいとの希望だった。実際、東京から夜行バスで金沢に到着し、それから再びバスで能登に。あるいは前日に羽田空港から能登空港に入り、月4回(土曜日)能登で学んだ。その後、実際に能登に移住した受講生もいた。

   そして、パーマカルチャーの第2波が新型コロナウイルスの感染拡大にともなう動きだ。コロナ禍で、石川県の自治体への移住相談が増えていて、とくに能登地域にある七尾市では前年同時期の約12倍、珠洲市は約4倍になっているという(2020年7月11日付・日経新聞北陸版)。コロナ禍をきっかにリモートワークが広がった。光回線や5Gなど通信インフラが整っていれば、東京に在住する必要性はない。第2波で特徴的なのは、このリモートワークをきっかけに、人だけではなく企業そのものが「本社移転」を目指し始めたことだ。

    昨年7月、総合人材サービスの「パソナグループ」は東京の本社機能の一部を兵庫県淡路島に移転すると発表し注目を浴びた。そして、東証一部の医薬品商社「イワキ」の社長はきのう29日に石川県の谷本知事を訪ね、ことし6月から本社機能の一部を東京から能登半島の最先端・珠洲市に移転することを報告した。同社は珠洲にテレワークの拠点を置き、同月から持ち株会社「アステナホールディングス」に移行、人事や経理を中心に希望者が移住する。メディア各社の記事=写真=を読んで、同社の本気度が伝わってきた。
  
   パーマカルチャーは人間の本能ではないかと察している。コロナ禍だけでなく、天変地異のリスクが東京で起きたとき、企業は果たして存続できるのか。パソナにしても、イワキにしてもそうしたことを本能的に嗅ぎ取って先回りをしているのではないかと思えてならない。もちろん企業的な計算や価値判断もあるだろう。能登でどのような企業展開を試みるのか注目したい。

⇒30日(土)夜・金沢の天気    あめ 


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