自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★能登半島地震 地域再生は可能か~5 祭りがある日常へ

2024年03月29日 | ⇒ドキュメント回廊

       まさに春の嵐、石川県内では早朝から強風と大雨の注意報が出ている。案じるのは能登の被災地だ。震源近くの珠洲市大谷町へ向かう途中に山のがけ崩れ現場があり、落ちてきた巨大な岩石が民家に迫っていた=写真・上、3月16日撮影=。珠洲市にも大雨注意報が出ていて、土砂崩れによる二次災害が起きるのはないかとの不安が心をよぎったりする。また、川べりの民家の場合、下流に「土砂ダム」が出来て住宅が水没するのではないかと考えたりもする。山のふもとにある集落では、このようなリスクを背負った状態のところがいくつかある。大量の雨をもたらす梅雨の時季までに対策が必要ではないだろうか。

  話は変わる。元日の地震で被害が出た奥能登だが、一部地域では「日常」に戻りつつある。奥能登の日常とは、祭りのこと。夏から秋にかけて祭りがどこかで毎日のようにある。子どもたちが太鼓をたたき、鉦(かね)を鳴らし、大人やお年寄りが神輿やキリコと呼ばれる大きな奉灯を担ぐ。このような祭りの光景が奥能登では毎日ように見ることができる。キリコ祭りは2015年4月に、日本遺産「灯り舞う半島 能登 ~熱狂のキリコ祭り~」に認定されている。

  その祭りシーズンの訪れを告げるのが、能登町宇出津(うしつ)の「あばれ祭り」だ。メディア各社の報道によると、「あばれ祭り」の開催について話し合う会議が今月27日に開かれ、7月5日と6日に実施する方針を確認した。あばれ祭りは、2日間にわたって40基のキリコが繰り出し、広場に集まって、松明(たいまつ)のまわりを勇壮に乱舞するのが見どころだ=写真・下、日本遺産公式ホームページより=。また、神輿を川に投げ込んだり、火の中に放り込むなど、担ぎ手が思う存分に暴れる。祭りは暴れることで神が喜ぶという伝説がある。

  記事によると、会議では「小規模な開催をしてほしい」という声もあったが、「地震からの復興を応援してくださった方に頑張っとるぞという姿を見せたい」「祭りまで中止となると、人口減が加速する」などと開催を支持する声が多く上がった(28日付・北陸中日新聞)。ただ、祭りは志納(寄付金)によって賄われていて、これまで祭りを支援してくれた人々の中には被災者もいることから、例年より寄付金が少なかった場合は内容の変更を検討する(同)。

  奥能登には「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」という言葉がある。祭りは地域・集落、そして家族・縁者にとっての価値観の共有でもあることから、日常生活でも優先されてきたイベントだ。その祭りが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2020年と21年は軒並み中止となった。3年ぶりでようやく祭りが復活、そして、ことし元日に能登町宇出津は震度6弱の揺れに見舞われた。

  上記の記事にある「頑張っとるぞという姿を見せたい」という声は、祭りのある日常の姿をはやく取り戻したいという能登の人々の心意気のようにも感じる。

⇒29日(金)午前・金沢の天気    あめ


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