自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「自助・共助・公助、そして絆」というSDGs

2020年09月17日 | ⇒メディア時評

   菅総理大臣の初めての記者会見がきのう16日午後9時からあり、テレビで視聴した。会見で述べていた「自助、共助、公助、そして絆」はこれまで何度か耳にしていたが、改めて聴くと、これはひょっとして「菅流SDGs」ではないのかと心に刺さった。

   菅氏はこう語っていた。「まずは自分でやってみる。そして、家族、地域でお互いに助け合う。そのうえで、政府がセーフティーネットでお守りする」。SDGsの理念は「誰一人取り残さない(leave no one behind)」だ。自ら努力し、助け合い、そして公的な支援でしっかりとした絆(きずな)をつくることで、誰一人取り残さないという意味だと解釈した。

   その次のコメントがさらに鋭かった。「こうした国民から信頼される政府を目指す。そのためには、行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打ち破って、規制改革を全力で進める。国民のためになる、国民のために働く内閣を作り、期待に応えていきたい」。これまでの内閣は新しいキャッチフレーズで政治や経済や政治のクローバル化や、福祉や医療の充実といった政策を打ち出してきた。ところが、菅氏は国民という目線で行政の縦割り、悪しき前例主義を打ち破る、「国民のために働く内閣」に徹底すると強調したのだ。これまでなかったキャッチフレーズではないだろうか。

   それでは、「自助、共助、公助、そして絆」を徹底的に実行することで、どのようことが可能になるのだろうか。SDGs17のゴールと照らし合わせてみる。1・貧困をなくそう (No poverty)、2・飢餓をゼロに(Zero hunger)、3・すべての人に健康と福祉を(Good health and well-being)、4・質の高い教育をみんなに(Quality education)、5・ジェンダー平等を実現しよう(Gender equality)、10・人や国の不平等をなくそう(Reduced inequalities)、11・住み続けられるまちづくり(Sustainable cities and communities)、16・平和と公正をすべての人に (Peace, justice and strong institutions)、17・パートナーシップで目標を達成しよう( Partnerships for the goals)、の9のゴールが見えてくる。

   さらに、菅氏は、携帯電話の料金が高すぎることなどを指摘し、「当たり前ではない、いろいろなことがある。それらを見逃さず、現場の声に耳を傾けて、何が足りないのかをしっかりと見極めたうえで、大胆に実行する。これが私の信念だ」と述べていた。これを経済と働く現場の感覚を重視するという意味で考えると、8・働きがいも経済成長も(Decent work and economic growth)、12・つくる責任 つかう責任(Responsible consumption, production)が見えてくる。さらに、菅氏が掲げる行政のデジタル化に加え、産業のデジタル化を推進することで、9・産業と技術革新の基盤をつくろう(Industry, innovation, infrastructure)のゴールも想定できる。

   ただ、菅氏のコメントで見えてこなかったのは生物多様性や気候変動といった環境問題に関する政策、そして、ODA(政府開発援助)だ。ODAによって、ぜひ、6・安全な水とトイレを世界中に(Clean water and sanitation)をサポートしてほしい。環境では、7・エネルギーをみんなに そしてクリーンに(Affordable and clean energy)と13・気候変動に具体的な対策を(Climate action)を示してほしいものだ。

   そして、外交として里山里海と生物多様性の問題にも取り組んでほしい。2010年に名古屋市で開催された国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された、20項目を10年で達成する「愛知目標」が困難との報告が公表された(9月15日付・共同通信Web版)。森林の減少や種の絶滅、海洋資源の乱獲が世界各国で報告されている。そこで、14・海の豊かさを守ろう(Life below water)、そして、15・陸の豊かさも守ろう(Life on land)のSDGs目標を掲げてはどうだろう。

   日本で採択された国際目標が達成できないとすれば、逆に2030年達成に向けて国際的なイニシャティブを発揮するチャンスではないだろうか。

⇒17日(木)午前・金沢の天気     くもり


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★「家を愛する人のように、核... | トップ | ★テレビ局は追い詰められた出... »

コメントを投稿

⇒メディア時評」カテゴリの最新記事