次の日本の総理を決める予備選でもある自民党総裁選(今月29日)。メディア各社が世論調査を実施している。共同通信社は17、18の両日、電話調査に投票資格があると答えた党員・党友に対し、新総裁にふさわしい人を尋ねたところ、河野行政改革担当大臣が48.6%で最多、岸田前政調会長が18.5%、高市前総務大臣が15.7%、野田幹事長代行は3.3%だった(9月18日付・共同通信Web版)。
読売新聞は自民党所属国会議員の支持動向調査を今月6日から16日にかけて実施し、衆参両院の議長を除く同党国会議員383人のうち、95%にあたる363人の意向を確認した。岸田氏と河野氏がそれぞれ約2割、高市氏は約15%の支持、16日に出馬を表明した野田氏は約10人の支持をそれぞれ集めている(9月17日付・読売新聞Web版)。毎日新聞が実施した全国世論調査(18日)では河野氏43%、高市氏15%、岸田氏13%、野田氏6%だった(9月18日付・毎日新聞Web版)。
河野氏は党所属議員の支持は岸田氏と並んで2割と高くはないが、党員・党友、そして全国世論調査ではそれぞれ40%台の高い支持を集めている。自民党総裁選が衆院任期満了の10月21日以降にも実施される総選挙の「党の顔」を決める選挙であるとすれば、河野氏で決まりということか。
きのう18日午後2時から行われた自民党総裁選の立候補者4人による公開討論会(日本記者クラブ主催)をNHKの生番組で視聴していた=写真・上=。前半の候補者同士のディスカッションでは河野氏に質問が集中していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つではなかったか。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。
討論会で注目していたのは、北朝鮮が日本海めがけて発射している弾道ミサイルについての議論だった。直近で今月15日、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾している。主催者側からの「北朝鮮問題にどう対応するのか」の問いに、岸田氏は「ミサイル防衛体制は十分なのか考える必要がある。敵基地攻撃能力についても選択肢としてある」、河野氏は「情報収集能力、そして北朝鮮に対する抑止力を高めてメッセージとして伝えることが必要だ」と答えた。
正直言って、河野氏の答えには少々失望した。2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回したのは当時防衛大臣だった河野氏だ。その後、当時の安倍総理はミサイル発射基地を自衛権に基づいて無力化する「敵基地攻撃能力」の保有の検討を表明したが、9月に就任した菅総理は議論を棚上げしていた。
なぜ、河野氏は敵基地攻撃能力の保有について触れなかったのか。それは、今回の北の弾道ミサイルは鉄道を利用して発射された=写真・下、9月17日付・朝鮮中央テレビ動画=と報じられているように、新たに移動式ミサイル発射台が開発され、その位置を検知して破壊することが難しくなっている。つまり、敵基地攻撃能力そのものが意味をなさなくなっている。
河野氏は上記のことについては精通しているはずだ。ではどうすべきなのかを元防衛大臣の見識から具体的な防衛ビジョンについて語ってほしかった。また、北の弾道ミサイルに一家言を持っている高市氏の見解も聞きたかったが、この質問に関しては元外務大臣の経験がある岸田、河野の両氏にのみ質問がなされたようだ。もどかしさが残った討論会だった。
⇒19日(日)夜・金沢の天気 はれ