自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆撮影禁止の威風堂々「百万石行列」

2022年06月08日 | ⇒トピック往来
   新型コロナウイルス感染拡大の影響で3年ぶりの開催となった「金沢百万石まつり」(今月3-5日)が盛り上がって無事終わり、市民の一人として、めでたし、めでたしと思っていたが、ある問題が浮上している。メイン行事の百万石行列(4日)が行われた際、主役の前田利家役の竹中直人とお松の役の栗山千明の2人のタレントに対し、撮影禁止の札を持った数人の係員が大声で「写真を撮らないでください」と呼びかけていたようだ。自身は行列は見に行かなかったのでその場面は見ていない。
 
   いまの時代、沿道ではスマートフォンを掲げて写真を撮る人が多く見られる。これはごく普通の光景だ。わざわざ沿道に来てパレードを見学に来た観衆とすれば、見せ場を撮るなというのは解せないだろう。ツイッターでも相当な数が上がっている。「2022年6月4日の3年ぶりに開催された #百万石まつり 印象に残ったのは撮影禁止とSNSの投稿禁止を高らかに叫ぶスタッフの声でした、とても残念な印象だけが残った。周りので見てる方も困惑してた」(7日付)など違和感の声だ。
 
   金沢百万石まつり実行委員会の公式サイトをチェックすると、5月28日付で「百万石行列 観覧の方へ撮影・録画に関するお願い」と題して、「前田利家公役(竹中直人氏)、お松の方役(栗山千明氏)の肖像権保護のため写真撮影・録画及びSNSへの投稿をご遠慮ください」とある。さらに、31日付では「百万石まつり写真コンテストについて」と題して、「昨今、無断でSNSにアップロードするなどの肖像権に関するトラブルが多発しているという意見があることを受け、実行委員会として関係者等と調整した結果、中止の判断にいたりました」。屋外の公道をパレードするタレントに対し、撮影・録画を禁止し、さらに写真コンテストも中止の措置。前回2019年までは可能だったことがなぜ禁止に。

   そもそも、タレントの肖像権はどういう扱いなのか。いわゆる「人格権」としての肖像権はタンレント、有名人、一般人に関わらず誰にでも一律に認められている権利だ。ただ、「財産権」あるいは「パブリシティ権」としての肖像権は一般人には認めらず、タレント・有名人のみに認められている権利となる。では、街角でたまたまタレントをみかけて撮影し、その写真をSNSにアップしたとして、タレントが訴えるだろうか。多くの場合、タレント自身は「有名税」で済ませ、訴えたりはしない。タレント側としても裁判にかかる時間や経費、裁判所への出頭義務などから判断して、自分の写真を無断掲載されたからといって、その都度、告訴はしない。
 
   むしろ、タレントの肖像権をめぐるトラブルはメディアとの間のトラブルだ。社会的反響が大きい場合、肖像が無許諾で使用されることがある。しかし、メディア側は肖像権よりも「国民の知る権利」を背景に公に報道することの方が優越的利益ととらえて掲載する。

   観衆が集まる公道での公の行事でタレントの撮影禁止は誰もが納得いくだろうか。ツイッターで
金沢市議の広田みよ氏が市役所の担当者にこの件を質問した際の回答を載せている。「昨今、無断でSNS投稿するなど肖像権に関するトラブルが多発しているという意見を踏まえ、百万石まつりでは同種のトラブルはこれまで起こってないが、実行委員会として関係者等と調整した結果、お二人の肖像権保護のため、撮影・録画及びSNS投稿をご遠慮いただくこととした」
 
   これまでトラブルがあって、今回はやむなく撮影禁止にしたというのであれば理由がつく。それもないのになぜか。得体の知れない大きな問題がそこに潜んでいたのか。来年も同じ措置が講じられるのであれば、百万石行列は体育館、あるいは県立野球場でクローズの状態で撮影禁止の念書にサインした観衆のみ入れるということになるのではないか。(※写真は、ことしの第71回金沢百万石まつりのPRポスター)
 
⇒8日(水)午後・金沢の天気     はれ

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