ことし3月25日の能登半島地震は死者1人、300人以上の重軽傷者を出す惨事となった。入梅したものの、今でもまだ青いビニールシートで覆われた屋根が能登のあちこちに見える。被災地の大きな特徴は、メディアとの接触機会が少なく「情報弱者」とされる高齢者が多い過疎地域ということだった。被災者はいかに情報を入手し、情報は的確に到達したのだろうか・・・。そんな思いから金沢大学震災学術調査に加わり、「震災とメディア」をテーマに調査活動を進めてきた。中間報告であるものの、調査から浮かび上がってきたことを述べたい。
震災とメディア・その1
震度6強に見舞われ、能登半島全体で避難住民は2100人余りに及んだ。多くの住民は避難所でテレビやラジオのメディアと接触することになる。ここで、注目すべきことは、門前町を含める45ヵ所のすべての避難所にテレビが完備されていたことだ。地震で屋根のテレビアンテナは傾き、壊れたテレビもあったはず。一体誰が。
この「テレビインフラ」を2日間で整えたのはNHK金沢放送局だった。翌日26日から能登の全避難所45カ所を3班に別れて巡回し、アンテナなどの受信状態を修復し、さらにテレビのない避難所や人数が多い避難所には台数を増やし、合計12台のテレビを設置した。用意周到だったのは、昨年5月に金沢放送局では災害時に指定される予定の避難所にテレビが設置されているかどうか各自治体に対し予備調査を行っていた。このデータをもとにいち早く対応したのである。
NHKは報道機関では唯一「災害対策基本法」が定める国の指定公共機関であり、災害報道と併せハード面のバックアップは両輪である。が、それだけではない。金沢放送局はこんなアフターフォローも行っている。地震が起きたのは3月の最終週に入る日曜日とあって、被災者から連続テレビ小説「芋たこなんきん」の最終週分を見たいとの要望や、大河ドラマ「風林火山」を見損ねたとの声があり、著作権をクリアにした上で、要望があった13カ所の避難所に収録テープを届け、またビデオの備えがない7カ所にビデオデッキを届けた。こうした被災者のニーズを取り入れた細やかな活動があったことはテレビ画面からは見えにくいが、避難住民を和ませたことは想像に難くない。
ようやくたどり着いた避難所にテレビがなく、情報が入らなければ余計に不安が増す。この点をNHKがきっちりとカバーしたのである。さまざまな批判がNHKに対してはあるものの、災害対応では評価されてよい。
※写真:テレビは避難住民の有力な情報源だった=輪島市門前町の避難所、3月26日
⇒22日(金)夕・金沢の天気 あめ
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