インターネットの活用を選挙で解禁する公職選挙法改正案が今の国会でようやく成立しそうだ。随分と待たされたとの感じがする。今回は本当だろうなとの猜疑心もよぎる。これまで、ネット選挙解禁についての論議は何度もありながら、政治の混乱の中で法案は提出されてこなかった。たとえば、2010年の参院選挙の前に、自民、民主、公明の与野党は候補者・政党が選挙期間中にホームページやブログを更新できるとする合意していたのに、である。
インターネットの活用を選挙で解禁するにあたり、ネックとなっていたのは、現行の公職選挙法は、公示・告示後の選挙期間中は、法律で定められたビラやはがきなどを除き、「文書図画(とが)」を不特定多数に配布することを禁じていたからである。候補者のホームページやツイッターなどソーシャルメディアの発信は、こうした文書図画に相当し、現行では認められていないのだ。
7日に自民党総務部会で了承された公職選挙法改正案を、報じられたニュースをもとにチェックしてみる。その骨子(ポイント)は5つある。◆電子メールを除き解禁。今夏の参院選から適用、◆メール送信は政党と候補者に限る。アドレス表示を義務づけ、虚偽表示には罰則。送信先の同意が必要で、同意を得た記録を保存する、◆落選運動をする際はアドレス表示を義務づける。虚偽表示には罰則、◆選挙運動用の有料ネット広告は原則禁止、◆選挙後のネットを利用したあいさつ行為を解禁…となる。
ソーシャルメディアの国内での広がりを背景に、法案では、候補者や政党以外の有権者だれでも、ホームページ(HP)やフェイスブック(FB)、ツイッターを活用した選挙運動ができる(解禁する)。HPなどにはメールアドレスなどの連絡先を明記することを義務づけ、別人を語る、いわゆる「なりすまし」を防ぐ。ただし、メールを送信する選挙運動は、なりすまし対策が難しいために政党と候補者に限定される。さらに、政党と候補者は送信先の同意が必要で、たとえば、メールマガジンを購読者に送る場合は、送信することを事前に通知して拒否されないことを条件としている。さらに、規定に違反したり第三者がメール送信をした場合は、2年以下の禁錮か50万円以下の罰金を科し、公民権停止の対象となる。
今回の改正案で面白いのは、候補者を当選させないための「落選運動」も事実上認めていることである。たとえば、選挙期間中(公示・告示から選挙当日)に「あの人の街頭演説はヘタだった」と有権者がFBで書くのは自由だ。ただ、アドレスや氏名の明記を義務づけ、罰則も定めた。アドレスの表示義務を果たしていないHPなどは、プロバイダー(接続事業者)が、中傷を受けた候補者らからの削除要求に応じるが、賠償責任までは負わないという免責も規定されている。
有権者にとって、メールで知人に特定の候補者の投票を呼びかけたりはできないので、解禁とは言いながらも物足りなさも感じる。今回の改正案では、「なりすまし」メールを過度に恐れている節も見受けられ、もどかしい。が、まずはネット選挙をスタートさせることだ。
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