石川県の白山ろくで農薬や化学肥料を使わない農業を営み、ホタルの保存活動を行っている知り合いから勉強会の誘いを受けて昨夜、出かけた。勉強会は白山市渡津(わたづ)町の集会所であった。テーマは「第12回白山麓わたづ町・蛍の里・ホタル観賞会~自然と共に環境は未来へ~」。勉強会に参加するのは9年ぶりだった。
誘ってくれたのは稲作専業農家の大田豊氏74歳。先祖代々からの里山の田んぼを受け継ぐ。標高220㍍の棚田に無農薬、そして無化学肥料のコメづくりに取り組み、2011年に「渡津蛍米」を商標登録した。いわゆる「生き物ブランド米」だ。兵庫県但馬地域の「コウノトリ米」や新潟県佐渡の「トキ米」が有名だが、大田氏も「生き物は田んぼの豊かさを示すバロメーター」が持論で、独学で田んぼと生物多様性について学んでいる。多彩なゲストを招いての勉強会もその一環。
60人余りが参加した勉強会は午後6時から始まり、6人のパネリストが発表した。印象に残った発表の一つが、NPO法人「日本ホタル再生ねっと」理事長の草桶秀夫氏(元福井工業大学教授)が説明だった。西日本と東日本ではゲンジボタルのオスの光り方が異なり、フォッサマグナ地帯を境とした西日本では2秒間隔、東日本では4秒間隔との内容だ。ゲンジボタルのミトコンドリア遺伝子につながる塩基配列を用い、全国108地域の個体間の遺伝的類縁関係を調べるなど調査した。その結果、進化の過程で遺伝的変異とともに、発光パターンが変化したとの解説だった。
そして意外だったのは、「ホタルは遺伝的多様性が大きいので、むやみに放流をしないこと」という言葉だった。「ホタルの移植(放流)3原則」というのがあって、▽移植元と移植先が同一河川に限る▽大きな山の尾根を越えた移植はしない▽10㌔以上離れた場所からの移植はしない、とのこと。つまり、よかれと思い遠くから幼虫などを大量に運んで放流したとしても、遺伝的には繁殖につながらないとの説明。つまり、ホタルの環境保全という視点から、ホタルの大量放流や飼育はできる限り、避けるべきとの解説だった。
午後8時ごろから、大田氏の水田でのホタル観賞会に参加した。水田に舞うヘイケボタル、そしてすぐ近くの河川に舞うゲンジボタル。夕闇の中、ホタルの群れが黄緑色の光跡を描きながら乱舞していた。ホタルが舞う田んぼには、耕す人たちのドラマがあるのだろうと感じ入った。そして、ホタルはきれいだという印象にとどまらず、農薬や化学肥料を使わずに自然との共生を考えるシンボルになってほしいとの思いを新たにして水田を眺めていた。
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