2018年12月21日、当時の岩屋防衛大臣は緊急記者会見を行った。能登半島沖の日本のEEZ内で、韓国海軍の駆逐艦が20日午後3時ごろ、海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだ、と公表した。いわゆるレーダー照射事件だ。
岩屋大臣の会見から7日後の28日、防衛省はP1が韓国駆逐艦を撮影した動画をホームページで公開した=写真=。レーダーの電波を音に変換してヘッドホンで聞いているP1の操縦士たちが「出しています」と電波を感知すると、「避けた方がいいですね」「めちゃくちゃすごい音だ」と緊迫した会話が録音されている。その後、P1から駆逐艦に向けて、「KOREAN NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971, THIS IS JAPAN NAVY, We observed that your FC antenna is directed to us. What is the purpose of your act ? over.」とレーダー照射の目的を無線で3度問い合わせている=写真・防衛省ホームページより=。問い合わせに対する駆逐艦からの応答はなかった。テロップは付けてあるものの、画像の編集はなく、13分7秒の実録である。
「事実上の攻撃着手」であり、日本側は証拠を示して重ねて抗議してきた。これに対し、韓国側は当初、「海自哨戒機が低空飛行で威嚇した」と反論していたが、ことし3月の韓国国会では国防大臣が「照射はしなかった」と発言するなど、事件自体を認めない姿勢に転換した。
このような状況にありながら、きょう4日、浜田防衛大臣は訪問先のシンガポールで、韓国のイ・ジョンソプ国防大臣と会談した。日韓大臣会談が行われるのは2019年11月以来、およそ3年半ぶりとなる。会談で、両大臣は日韓の防衛当局間の協力を進展させる必要性を確認したものの、レーダー照射問題については両国の事務レベルで再発防止策を含めた協議をすることにした(4日付・NHKニュースWeb版)。
日本側とすれば「けじめ」をつけて、次なる日米韓の軍事協力に会談のステージを上げたいのだが、韓国側が国会で「照射はしなかった」と発言している以上、事務レベルで解決の糸口が見いだせるとは思えない。今後の展開がますます見通せなくなってきた。
⇒4日(日)夜・金沢の天気 はれ