自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「チャールズ・パッチ」と「金継ぎ」の循環型経済

2022年12月26日 | ⇒トレンド探査

   最近何かとイギリスの王室の話題がテレビの情報番組などで紹介されている。気になった言葉があった。「チャールズ・パッチ」。9月に即位したイギリスのチャールズ国王は皇太子時代から、愛用していた革靴や衣類にパッチを施して使い続けたことから、この言葉が広がったようだ。丁寧な修繕という意味だろうか。靴の場合、ただの革のパッチではなく、張り合わせた革を縫いつけ固定することで、ひび割れなどを隠して補強するという丁寧な補修を指す。

   検索すると、イギリスのメディア「デイリーメール」Web版(2018年4月8日付)に「The penny pinching prince! Charles reveals that he is still wearing a pair of shoes he bought in 1971 - and is holding on to a 50-year-old jacke」の見出しで、チャールズ・パッチのことを紹介している=写真・上=。皇太子(当時)は1971年に購入し、パッチした靴を47年間も履いていて、50年前のジャケットをまだ着ていると話した、と報じている。

   このチャールズ・パッチという言葉を知って、「金継ぎ」という言葉を連想した。陶器のひび割れを漆と金粉を使って器として再生する技術のこと。知人から見せてもらった金継ぎの茶碗は紅葉の絵の抹茶碗に細かく金継ぎが施されている=写真・下=。若いころ茶道を習っていて、茶碗をうっかり落としてしまった。茶道の先生からいただいた思い出のある茶碗だったので修復を依頼したそうだ。

   金継ぎという言葉が世界に広がったきっかけがあった。東京パラリンピックの閉会式(国立競技場・2021年9月5日)でアンドリュー・パーソンズ会長が発した言葉だった。日本の金継ぎの技術について、「不完全さを受け入れ、隠すのではなく、大切にしようという発想であり素晴らしい」と述べて、金継ぎという言葉が世界でもトレンドになった。さらに、金継ぎは一度は壊れてしまった製品を修復するだけでなく、金箔を使うことでアートを施し、芸術的価値を高める。

   もともと、欧州やアメリカでは「kintsugi」が知られていた。その理由の一つが、サステナビリティとサーキュラーエコノミー(循環型経済)を各国が推し進めていることが背景にある。サーキュラーエコノミーとは資源や製品が高い価値を保ったまま循環し続ける社会経済だ。このサーキュラーエコノミー実現において、製品をできるだけ長く使い続けることは特に重要視されており、修繕はその要となる。SDGs「17の目標」とも調和がとれる。

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