ずっと以前から「卵は物価の優等生」という言葉が脳裏にある。スーパーでは10個入りパックが200円前後で売られていて、特売日では160円というイメージだ。きょうスーパーの卵売り場をのぞくと1パックが「269円」となっていた。「物価の優等生がいつの間にかインフレの急先鋒」となったようだ。
卵を悪者扱いするつもりはまったくない。急いでいるとき、卵かけごはんでさらさらと食事を済ませると、時間と栄養を稼いだ気分になる。冷蔵庫には卵は絶やさずあり、重宝する食材ではある。その卵の値段高騰の背景に2つの要因があるようだ。一つは、配合飼料原料であるトウモロコシなど穀物のひっ迫だ。
一般社団法人「日本養鶏協会」のことし9月の「鶏卵の需給見通 し」によると、中国はアフリカ豚熱(ASF)後に大規模な養豚振興策として穀物輸入を拡大し、世界のトウモロコシの7割の在庫を保有している。さらに、アメリカは地球温暖化対策としてエタノール需要が増大していて、原料のトウモロコシ需要が増している。追い打ちをかけるように、ロシアのウクライナ侵攻によって、トウモロコシの主産地ウクライナからの輸出減や物流混乱が続いている。もう一つが、鳥インフルエンザの感染が過去最多の処分数となった2年前を超えるペースで急拡大していて、出荷量そのものが減少していることも背景にあるようだ。
スーパーの卵売り場では6個入り1パック429円という高級品も目にとまった=写真=。1個70円余り。パックを見ると、「放し飼い 自然卵」「平飼卵」などと記されている。日本の卵が「物価の優等生」であったのは、いわゆるケージ飼いによる大量生産で卵が供給されてきたからだと言われている。これに対し、狭いケージにニワトリを閉じ込めて生産性を上げる従来の養鶏・鶏卵のシステムは、「アニマルウェルフェア(Animal Welfare、動物福祉)」に反するとして、欧米ではケージフリー・エッグ(平飼いの卵)が主流になっている。
世界の眼は日本の養鶏・鶏卵業者に対して厳しくなっているとも指摘されている。ただ、ケージに入れることにより、ニワトリを土やフンから離すことができ、雑菌や寄生虫などの影響を受けない分、ニワトリは病気にかかりにくくなるとの利点もある。
さて、ケージ飼いの10個入りパック269円の卵か、平飼いの6個入りパック429円の卵か、どちらにするか。迷ったあげく、伸び伸びと育てたニワトリの卵かけごはんが食べたくなり、手を伸ばした。
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