庭に「アメリカハッカクレン」が咲き競っている。ちょっと見ただけでは、どこに花があるのか分からない。ハスのような葉の下方に花を付けているので、近くで観察しないと分からない。漢字で表記すると「亜米利加八角蓮」。「八角蓮」は読んで字のごとく、八角形をしたハスの葉という意味のようだ。
毎年この時節にアメリカハッカクレンを床の間に生ける。普通の生け方ではない。何しろ「蓮」なのだ。尊い花という意味合いの生け方になる。耳付き古銅の花入れ、そして敷板は真塗の矢筈板だ。掛け軸は『柳緑 花紅』(やなぎはみどり はなはくれない)、11世紀の中国の詩人・蘇軾の詩とされる。緑と白が浮かび上がり、凛とした感じで床の間を彩る。
ハッカクレン はアジアでは中国や台湾が原産とされ、花は赤褐色。アメリカハッカクレンは名前の通り、北アメリカが原産で花の色は白い。学名は「Podophyllum peltatum」。英名で「May apple」。メイアップルは、5月に咲くこの花の後に付く実がリンゴの形に似ているので名付けられたようだ。さらにネットで調べる。ウィシスコン大学マディソン校の公式サイトで以下の説明があった。アメリカでは、山野草として扱われる。アメリカの先住民たちは根茎や根をポドフィルム根といい、下剤や除虫薬として重宝していた。別のサイトによると、悪性リンパ腫などの抗がん剤として研究も進んでいるようだ。
アメリカハッカクレンは他の八角蓮とは違って、葉の形がそれほど大きくないことから、茶花として重宝される。ふと思った。北アメリカでは単なる山野草なのだろう。しかし、日本では仏教の花「蓮」として格式高く扱われる。床の間の様子を北アメリカの人々が見たらとても不思議に思うかもしれない。メイアップルは日本では「聖なる花」なのだ、と。
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