きょう午後から自宅庭の草むしりをした。4月の暖かさを超えて、夏日のような暑さだった。雑草は例年、桜のソメイヨシノの満開が過ぎたころから勢いが増す。ドクダミ、チドメグサ、スギナ、ヨモギ、ヤブカラシが顔を出していた。無心に雑草を抜き取り、そして、落ち葉を掃く。
草むしりを終え、心地よかった庭の風を連想して、床の間に『柳緑 花紅』の掛け軸を出した=写真・上=。「やなぎはみどり はなはくれない」と読む。ネットで調べると、11世紀の中国の詩人・蘇軾の詩の一部のようだ。柳は緑色をなすように、花は紅色に咲くように、それぞれに自然の理があるという意味のようだ。四文字の掛け軸は詩的であり哲学的でもある。そして、淡い二色が春の美しい景色が描き出す。ありのままの姿が真実だということ。
夕方から金沢市内の茶席に出向いた。知人たちが趣味で始めている茶道の会の招きだった。そこで、お菓子が出された。名前は『都の春』という、市内の和菓子屋がつくったもの。よく見ると、緑とピンクの2色のそぼろを付けたきんとん=写真・下=。この季節に、予約してつくってもらった上生菓子という。
思わずエッと口にした。家の床の間に掛けてきた掛け軸『柳緑 花紅』の和菓子と同じイメージだ。知人に尋ねると。にっこりと説明をしてくれた。お菓子の薄紅色は桜の花を表現している。緑色は若葉というより柳の葉を表している。京都の高瀬川などでは両サイドに桜の木と柳の木が並んでいて、この季節は重なり合うように咲く。『都の春』という生菓子は銘も含めて京都の和菓子文化なのだという。
そして、知人は和歌を詠んだ。「見渡せば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の 錦なりける」。10世紀初頭の平安時代につくられた『古今和歌集』で、素性法師が詠んだ。『都の春』という銘もこの和歌が由来だとか。
この後、濃茶の一服を楽しんだ。季節の自然は『柳緑 花紅』、菓子は『都の春』、ちょっとした旅気分に包まれた。
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