きょう7日の全国紙で「30段広告」を打って、「敵は、嘘。」「嘘つきは、戦争の始まり。」と吠えているのは出版社「宝島社」だ。30段広告とは左右の見開き全面広告のこと。それだけに目立つ。ここ数年、年明けになると、「ことしのテーマは何だろう」などと気にかけていた。今年のテーマはフェイクニュースを許すなとのメッセージだ。首をかしげるのは、「敵は、嘘。」のキャッチは読売新聞、「嘘つきは、戦争の始まり。」は朝日新聞の2パターンがあるのはなぜだ。
読売の「敵は、嘘。」はデザインがイタリア・ローマにある石彫刻『真実の口』だ。嘘つきが手を口に入れると、手を抜く時にその手首を切り落とされる、手を噛み切られる、あるいは手が抜けなくなるという伝説がある。「いい年した大人が嘘をつき、謝罪して、居直って恥ずかしくないのか。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。」とフレーズが高揚している。この文を読めば、昨年国会で追及された一連の問題のことを指しているのかなと想像する。つまり、読売の読者には内政での嘘を見抜けと発破をかけているのではないか。
片方の、朝日の「嘘つきは、戦争の始まり。」はデザインが湾岸戦争(1991年)のとき世界に広がった、重油にまみれた水鳥の画像だ。当時は、イラクのサダム・フセインがわざと油田の油を海に放出し、環境破壊で海の生物が犠牲になっていると報じられていた。そのシンボリックな写真だ。ただ、イラクがアメリカ海兵隊部隊の沿岸上陸を阻むためのものであるとの報道や、多国籍軍によるイラクの爆撃により原油の流出が生じたなど、その真偽はさだかではない。「今、人類が戦うべき相手は、原発よりウィルスより温暖化より、嘘である。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。」とこれもテンションが高い。全体のトーンからアメリカのトランプ大統領の在り様を連想させる。つまり、朝日の読者にはアメリカの嘘を見抜けとけしかけているのではないか。
宝島社のホームページによると、企業広告の意図が掲載されている。「気がつくと、世界中に嘘が蔓延しています。連日メディアを賑わしている隠蔽、陰謀、収賄、改ざん…。それらはすべて、つまりは嘘です。それを伝えるニュースでさえ、フェイクニュースが飛び交い、何が真実なのか見えにくい時代になってしまいました。人々は、次から次に出てくる嘘に慣れてしまい、怒ることを忘れているように見えます。いまを生きる人々に、嘘についてあらためて考えてほしい。そして、嘘に立ち向かってほしい。そんな思いをこめて制作しました。」
ここまでくると、企業広告とはいえ、出版社のジャーナリズム性が問われる、と考察する。今度は宝島社そのものが、どうフェイクニュースと戦うのかそのスタンスを明示しなければ、企業広告の価値、そして企業そのものが問われるだろう。一度振り上げた拳(こぶし)は簡単に下ろせない。
ちなみに、宝島社の年初広告は2018年1月5日付は「世界は、日本を待っている」。自然を崇拝し、異文化を融合させながら常に新しい文化を創造してきた国、日本がテーマ。2017年1月5日付は「忘却は、罪である」。前年にオバマ大統領の広島訪問、安倍総理の真珠湾訪問が実現した歴史的な年だったことから、世界平和をテーマとした。次なる宝島社の30段広告に期待したい。
⇒7日(月)夜・金沢の天気 くもり時々あめ
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