自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ホワイトハウスの内紛劇

2017年08月20日 | ⇒メディア時評
    北朝鮮の弾道ミサイルの行方もさることながら、アメリカのホワイトハウスの内紛劇もすさまじい様相を呈してきた。19日付(現地時間)のニューヨーク・タイムズのHPをのぞくと、ボストンでの白人至上主義、ネオ・ナチズムに反対する数千人規模のデモの様子が掲載されていた。デモはこのほか、シカゴ、ダラス、ヒューストンでもあったようだ。気になるのはホワイトハウスに関する以下の見出し記事だ。

    With Bannon’s Ouster, Question Remains Whether His Agenda Will Be Erased, Too バロンの追放によって、その政治・政策的な行動予定も取り消されるのか、それにしても問題は残る

    トランプ大統領を誕生させたともいわれるスティーブン・バノン氏(大統領首席戦略官)は更迭され、ホワイトハウスを去った。ニューヨーク・タイムズが問題としているのは、たとえば通商政策。中国とは経済戦争の状態にあるとしてバノン氏は貿易面で中国に圧力をかける政策の主導役だった。そのバロン氏の更迭をホワイトハウスが発表して3時間後、アメリカ通商代表部(USTR)は中国に対する「通商法301条」に基づく調査を開始したと発表している。301条では外国による不公正な貿易慣行に対して、大統領の判断で関税の引き上げが可能になる。

    バノン氏が経済戦争と称したのは、アメリカ企業の技術移転を義務付ける不透明な認可手続きや、中国の民間企業にアメリカ企業の買収を指示、中国政府によるアメリカ企業へのハッカー行為などだ。中国との貿易戦争にバノン氏は裏方で政策的なアジェンダを組み立て、USTRを動かしてきた。バノン氏更迭の後、こうした政策は遂行されるのだろうか。上記の見出しはポスト・バノンの政策には問題が山積している、と問題提起している。

    そして、同紙は更迭後のバノン氏のこの言葉を紹介している。“And anyone who stands in our way, we will go to war with.”

    この言葉を直訳すれば、「(ホワイトハウスを去ったが)同志とはともに戦う」。裏を返せば、中国との経済戦争で柔軟路線に修正するということであれば、その人物とは徹底的に戦う、とも取れる。アメリカ第一主義を押し通すバノン氏は、ホワイトハウスとも一線交える覚悟を表明したのだ。ニューヨーク・タイムズの見出し中の「Question Remains」はまさに「今後のホワイトハウスの火種」とも読める。バノン氏はもともとホワイトハウス入りする前まで、ニュースサイト「Breitbart News Network」の経営者だった。復帰して戦うのだろう。

   もう一つ、バノン氏のセリフを。アメリカのメディアが盛んに週刊誌「THE WEEKLY STANDARD」から引用しているこの言葉だ=写真=。“The Trump presidency that we fought for, and won, is over. ” われわれがともに闘い、勝利をおさめたトランプ政権は終わった

   バロン氏が更迭後に保守系メディアの同誌のインタビューで語ったとされる言葉。捨てセリフと言うより、無念さがにじんでいないだろうか。アメリカの政治史を塗り替えた昨年12月の大統領選挙から8ヵ月余り。日々伝えられるホワイトハウスの内紛はまるで政治ドラマだ。

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