自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆核廃絶なぜ「反対」なのか

2016年11月01日 | ⇒ニュース走査
   それにしても腑に落ちない。核兵器を法的に禁止しようという核兵器禁止条約の制定交渉を来年2017年3月から開始するという決議案が、軍縮を担当する国連総会第1委員会で123ヵ国の賛成多数で採択された。一方、アメリカ、ロシア、イギリス、フランスなどの核保有国など38ヵ国が反対したが、その中に唯一の被ばく国として核兵器の廃絶を訴えてきた日本が反対にまわったのだ。

   ことし5月28日、アメリカのオバマ大統領と安倍総理は広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、オバマ氏は所感で、核廃絶を訴えたではないか。国民はこの様子じっとテレビで見つめ、核なき平和に希望を抱いた。

  Among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear and pursue a world without them. We may not realize this goal in my lifetime, but persistent effort can roll back the possibility of catastrophe.(わが国のように核を保有する国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない。私たちが生きている間にこの目標は達成できないかもしれないが、たゆまぬ努力が大惨事の可能性を小さくする。)


   反対に投じた日本の主張はこうだ。28日、岸田外務大臣が記者会見で語ったコメントは「決議は具体的、実践的な措置を積み重ね、核兵器のない世界を目指すという我が国の基本的立場に合致しない」との理由だった。これを解釈すると、核軍縮を実効的に進めるには、核保有国と非保有国の協力がなければならない。それは、国際社会の総意で進められるべきだと日本側は強く求めたが、受け入れられなかった、とういことを言いたのだろう。これまで、唯一の被ばく国として核兵器を持つ国と持たない国の「橋渡し」をすると日本は繰り返し国際舞台で述べてきたではないか。今こそ日本がその立場を誇示して、「橋渡し」役を果たすべきだろう。

  今回反対したことで、賛成・反対問わず各国から見れば、日本は完全に軸足を核保有国側に移したということになる。安全保障の観点からみても、国際的な信用度という面でも深刻な問題ではではないだろうか。

   確かに、北朝鮮など日本の近隣諸国では核戦力の開発で騒がしい。これが現実の核の脅威であり、アメリカの「核の傘」の重要性は増しているという判断なのだろうが、アメリカやロシアという核兵器保有国と足並みをそろえて反対したのは納得できないと考えるのは私だけだろうか。百歩譲って、日本には棄権という選択肢はなかったのだろうか。あの中国やインドの保有国は棄権しているのだ。唯一の被ばく国という立場をもとにして、国際的に核廃絶のリーダーシップを取るという日本の本来の役割が失われたような気がしてならない。

⇒1日(火)朝・金沢の天気    あめ
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