読むといっても、目を通したという程度の意味になるが、それでも、最後までいくには時日を要した。なにしろ分量が多い。ただ、はじめて知った話ばかりであり、自分の周囲に起こっていることとも関連して、腑に落ちる読書体験をさせてもらった。
政治的な弾圧や、拷問の手法、それと密接に関わるビジネス手法のからみあっていることが、説得力を持って語られている。世界中での、あちこちの事例が語られる。序章で、アメリカルイジアナ州での、ニューオーリンズの水害を契機として、公教育が破壊され、教員の職がうばわれ、ビジネスチャンスにされていくプロセスが描かれる。
災害や、事件を、ビジネスチャンスととらえる「惨事便乗型資本主義の正体」が暴かれる。貧富の格差が、次々に、実現されていくプロセスが理解できる。これに対処する方策は、下巻で語られるようなので、早速購入したいと思っている。
さて、日本の現状をみれば、こういうビジネススタイルは、すでに、かなり浸透してきているように思える。従来とは違う、考え方、金儲け主義のあからさまな姿勢が顕著となってきている。たとえば、損保業界の代理店制度などは、全然形が変わってしまった。代理店手数料は劇的に下げながら、顧客の支払い保険料はむしろ上がっている。そのもうけの差額は、株主へいく。外資の強い要求であるらしい。
へんてこルールのおしつけは、南アフリカの事例でもでてくる。欲深な連中の策謀にみごとにはまって苦しむ人々。これらの実態を、まずは知らなければ、解消には向かえない。その意味で、この本のもつ意義は大きいものがある。
著者のナオミ クラインさんは、現在41歳の若きカナダ女性である。本書が3作目であるという。「たのもしい」人が現れたものである。
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