五木寛之さんの著書である。朝鮮から引き揚げで、過酷な体験をしておられる。その悲惨な体験が語られる。彼の風貌は、いかにもさわやかで、スマートで、とてもそんな体験があった人にはみえない。
辛い体験をのりこえ、ある種の高み、境地に到達しておられる明るさのように思う。本のなかには、加賀乙彦さんとは違って、数字や統計はでてこないけれども、実際体験からくる人間論として、この本も読むべき力作だと思う。
人間そのものよりも、関係に力点をおく考え方は、新しい。どういう発展をしていくのか、さらなる仕事が、続けられていくだろう。
個々の人間は、周辺に影響され、条件の変化によって、本人も予想がつかないような変貌を遂げることもある。そして、独りでは生きていくことは、今や不可能といってもいいから、人間同士の関係については、もっと研究されるべきだろう。
とりわけ、他人のことは、道具としか考えない連中。人を人とは思わない考え方が、まだまだ制度にもある。人間社会そのものが、水準として、まだ始まったばかりなのかもしれない。これからだと思いたい。
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