書名「千島列島をめぐる日本とロシア」
著者 秋月俊幸 出版社 北海道大学出版会 出版年 2014
近藤重蔵が書いた「ちゅぷか考」という写本を、石川清馬が所蔵していたこと、これが始まりだった。これは千島列島について千島アイヌのひとりから聞いて書いたものに、いままで千島に関連して書かれたことを加えたもの。これを読んでいるときに、書棚でみかけたのがこの本。すでに読んでいたものだが、ちょっとページを開いてみると、ちゅぷか考で書かれていたことがよくわかるようになり、結局また読み直すことになった。昨年亡くなられた秋月さんの本にしては珍しく一般向けに書かれた概説書なのだが、千島列島をめぐる日本とロシア、さらには千島アイヌの人たちの歴史を端緒となったイエズス会の宣教師の冒険からプーチン時代の北方領土政策までをたどることができて、とても参考になった。こういう仕事は、秋月さんしかできないものだとつくづく思う。北方領土の問題のみで語られることが多い千島列島だが、こうして概史としてみていくと、いかにここで住んでいた千島アイヌの人たちのことをまったく無視して、日本とロシアがここで得られる利益取り合いしていたかということがよくわかる。明治になり千島列島が日本の領土ということで確定されたあと、日本からすれは遠方の北千島の島民たちを強制的に他の島に移住させるという施策などは、それを象徴する。先日国立民俗博物館で見てきた擦文文化の展示などを見ても、この千島列島の文化と歴史はいまもっと注目されるべきだと思う、その時この書はその入門編として読まれ続けていく価値がある。。。
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