デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

吉村昭が伝えたかったこと

2011-09-30 13:19:57 | 買った本・読んだ本
書名 「文藝春秋9月臨時増刊号 吉村昭が伝えたかったこと」
出版社 文藝春秋  出版年 2011年

吉村さんが亡くなって5年が経ち、いまこのような特集雑誌が出版されるというのは、それだけいま吉村さんに注目が寄せられているということだろう。「三陸沖大津波」が再版され、ベストセラーとなり、また妻津村節子さんが「紅梅」を発表、いままで語られなかった吉村さんの闘病生活が明らかになったこともあるのだろう。
端的に言うと、この特集とても良かった。吉村さんの津波についての講演、歴史小説についてのインタビュー、さらに津村さんのインタビューと、余計な吉村解説があまりなく、吉村さんご自身の作品やインタビュー、講演記録からなっているからだと思う。吉村ファンはやはり読むべき一冊だと思う。
実は、いままでノンフィクションしか書いてこなかった私が、歴史小説というか読み物を書こうと準備している。だからこの中に収められている吉村さんのインタビュー記事「『書くこと』と『書かないこと』」は、非常に胸に響いた。ノンフィクション以上に、小説としたときにどんな難しさがあるのか、それを教えてもらった。
地震と津波についての講演は、いま読むと、もしも吉村さんが今回の津波と地震のことを知ったらどう思われんのだろう、かなり大きなショックを与えたと思う。ひとつには自分が愛した三陸の町がほぼなくなってしまったこと、そしてあれだけ警句を発していたのに、それが実らなかったからだ。
なくてもいいと思ったのは、三陸を歩いた高山文彦のルボと、石井光太のエッセイ。吉村さんの講演記録を読んだあとだと、凄惨な現場をルポした記事なはずなのに、なにか的がずれているようなきになった。
旅のエッセイも良かった。一度だけ石巻にお伴しただけなのだが、吉村さんにはきちんとした旅のスタイルがあるように思えた。その旅のスタイルのいったんも読むことができる。ほんとうにお酒が好きだったのだなあ、あんな飲み方したいものだと思わずうなった。
長部日出雄が映画化をもくろんだという「破獄」のシナリオも興味深いものだった。映画になったのを見たかったとも。
最後に実はまだまだ吉村さんの作品を読んでいないことに巻末のブックガイドを見て、気づいた。とりあえずはボクシングものを読んでみようか。
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